競馬である。
あえて気分が悪くなる話をしなくてもいいのだが、5月に行われたオークスで今村聖奈騎手が日本の女性騎手として初のG1競争を制覇したことに続き、先月6月28日の函館記念でも、女性の小林美駒騎手が自身初の重賞制覇をなしとげた。
審議に20分、もっと早く結果を発表すべきだった函館記念
しかし、このレースでは、小林騎手が乗ったファウストラーゼンが外側へ斜行し、2着となったケリフレッドアスク(北村雄一騎手騎乗、藤原英昭厩舎)の進路が狭くなった事象で審議が行われ、ややケチがつくことになった。さらに悪いことに、その審議が約20分と異常に長くなった。
審議の結果、レースとしての到達順位の変更には至らないが、しかし、小林騎手は7月11日から19日まで、開催日4日間の騎乗停止となった。さらにさらに、例外的なことに、藤原調教師は降着の裁決を求める申し立てを行い、それが棄却されると、6月30日付で「裁決の取り消し」を求める不服申し立てを行った。これに対して、JRA(日本中央競馬会)は、7月7日の裁定委員会で審議し、この不服申し立てを棄却した。これが一連の顛末である。
論点は少なくとも2つある。
まず「騎手が騎乗停止処分を受けたのに、馬の成績はそのまま、というのは矛盾ではないか」という点。これは、秩序だった説明が可能だ。例えば、危険な騎乗などは騎手に制裁を課する必要はある。だが、明らかに勝てる力のない馬(被害馬)が、勝った馬(加害馬)の荒っぽい、ラフな騎乗などに影響を受けて大敗したときなどで、レース結果に対しても制裁をしてしまうとどうなるか。
例えば被害馬が13着だった場合には、ルール上、加害馬は被害馬の後ろの14着になってしまう。ラフな騎乗なかりせば、つまりフェアな騎乗だったら、実力のない馬の後ろの14着になるわけもなく、こうした裁定を下すのは、馬の能力の検定レースとしての競馬の本来の意味から遠くなってしまい、本末転倒である。
しかし、今回の場合、被害馬は2着だ。しかも、1着との着差もわずか半馬身、さらに被害を受けた地点が、まさにゴール直前であり、さらに言えば、1着馬が2着馬の進路であった外へ寄り続け、それが複数回にわたっており、なおかつ、それを防止しようとするどころか、右ムチを複数回使い(右が内側である)、その右ムチによって、何度も2着馬に馬体を寄せることになった、という状況が、議論を呼んだ。
もちろん、JRAの判断は常に公正、厳密であるから、すべてを考慮したうえで「降着なし」となったのであろうが、しかし、1着と2着の接戦において、実効4日間の騎乗停止処分というかなり重い処分をとったような場合には、同時に降着にしないと、2着の馬の関係者、馬券の購入者から納得が得られにくいであろう、ということは言える。
実際、温厚で知られる藤原調教師が、レース当日に申し立てを行い、さらにその裁決に対して、後日に不服申し立てを行うということは、極めて稀なことであり、状況の深刻さを示していると言える。
第2に、レース直後の裁決(降着なし)の決定に、通常の審議に比べて極端に時間がかかったことがある。多くの場合、時間がかかる、ということは「審議対象になった馬は、降着になるんだな」、というのがファンの一般的な感覚である。
降着にするには、慎重に審議をする必要があるからで、長時間審議をして、何もない、というのも異例である。それで、これは非常に書きにくいことだが、小林美駒騎手だったからではないか、という臆測を呼んでしまったことがある。
この点に関しては、これ以上書かないが、もしこの決定が、「事なかれ主義」「さまざまな配慮を行いすぎる癖がある」などとも言われるJRAの体質に影響を受けているのだとすれば、非常に残念だし、JRAという組織の文化を変える必要がある、という思いを強くせざるをえない。私は、JRAがそう思われないためにも、あの審議は、なんとしてもすばやく結果を出すべきだったのであり、20分もかけてしまったことが、最大の失敗だったと考える。
さて、週末の12日は、福島競馬場の芝コース2000mの七夕賞(G3)という、この持ち回り連載のもう一人のかんべえ氏(溜池通信代表)がもっとも好きな重賞の1つが行われる。私が予想する番になってしまい、申し訳ない気持ちで一杯だ。ここは、地元出身の田辺裕信騎手が乗る馬(アスクナイスショー)、と言いたいところだが、実力が上でかつ伸び盛りの4歳馬、カラマティアノス。単勝。

