国内でAIを開発する企業は富士通、NEC、ソニー、アクセンチュアなど日立以外にも数多くある。日立と組むメリットとは何か。この点について、安達氏は「鉄道車両製造、信号・運行管理システム、保守、運行受託など鉄道のフルターンキープレイヤーである」ことを挙げる。確かに、本業で鉄道事業を手がけている日立だからこそ、鉄道分野でのAIに精通しているのは間違いない。
気になったのは、HMAXの導入コストである。大都市以上にローカル線では鉄道員の人材確保が喫緊の課題である。大手の鉄道事業者であれば潤沢な予算があるだろうが、収益力の劣る中小事業者でも導入可能なのか。この疑問に対する答えは「“オールHMAXストレイン”であれば、センサーが100個も200個も必要となるが、そういう売り方はしない。お客様の課題に合うように、例えば5個だけ入れてもらうといった形になる」。
スケールメリットで価格は下がるか
また、導入費用を減免する代わりに、得られた効果を日立と鉄道事業者が折半するプロフィットシェアリングといった方法もあるという。何より、鉄道業界で普及すれば、スケールメリットで導入価格も下がっていくだろう。
HMAXが目指す究極の未来は、AIが異常予兆を検知し、その緊急度に応じて「運行計画の変更」から「補修スケジュールの策定」までを自律的に行う世界だ。
「いきなりその世界には飛べない」としながらも、現在国内各社と進めている第1段階の取り組みは、着実に広がっている。事業者の規模を問わず、費用対効果に見合った現実的なDXを推進できる日立のロードマップが鉄道業界全体へ波及したとき、日本の鉄道インフラは真の自律進化を遂げることになるだろう。

