「ずっと家にばかりいて、1歳6カ月になった双子は本物の花を見たことがなかったんです。一念奮起して子どもたちを自転車に乗せ、お花屋さんに行きました。楽しい思い出ができた帰り道、バランスを崩して転んでしまいました。子どもたちは無事でしたが、私はけがをして血まみれになって……。驚いて泣き叫ぶ子どもたちをなだめながら、私のなかでプツンと糸が切れたようになりました。もう二度とこけない自転車に、私は乗るねん!と決めたんです」
子どもを乗せられる3輪自転車が欲しい…ゼロからのスタート
転んでしまったのは、2輪自転車で安定感がなかったからだろう。そう考えた中原さんは、3輪で子どもを乗せられる自転車を購入しようと自転車ショップに行く。ところが返ってきたのは「子どもを乗せられる3輪自転車なんて、見たことがない」とそっけない答えだった。
店舗で扱っていないのなら作ってもらえばいいと、自転車メーカーを調べ、かたっぱしから電話をする。けれど「そんな自転車、あるはずがない」と話もまともに聞いてもらえず、怒られることもしばしばだった。当時、かならず言われたのが「道路交通法を知らないのか?」「そういう自転車が存在しないのは、ニーズがないからだ」ということだった。
「双子を育児する私自身が、こんなに欲しいと思っている自転車です。同じ思いを抱いている人はかならずいるはずだと考えました。それからは、1人で交差点に立ち、自転車の前後に子どもを乗せる母親たちの様子を観察するようになりました」
すると、なんとかバランスを保とうと頑張る母親の姿を何度も見かけた。みんな必死になりながら子どもを乗せて自転車を走らせている。中原さんは、実際に困った様子の母親に声をかけ、話を聞くこともあったという。
さらに気づいたのは、母親たちは大変さを自覚さえしていないこと。苦労するのが当たり前になっていて、自分が何を求めているかさえイメージできていなかったのだ。

