血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが鈍ると、血糖値が下がりにくくなり、余った糖が脂肪として蓄えられやすくなります。さらに膵臓が補おうとしてインスリンを大量に分泌すると、今度はそれが男性ホルモン(アンドロゲン)の産生を促し、月経不順や体毛の増加につながっていきます。
これがいわゆる「PCOSの悪循環」です。
この悪循環を断ち切るためにモランらのポジションステートメントが勧めているのが、前述の通り、まず体重を適切に落とすことが出発点になります。
もちろん、急激なダイエットは推奨していません。過度な食事制限はストレスホルモンのコルチゾールを上昇させ、ホルモンバランスをかえって乱すリスクがあるからです。まずは週に数回の軽い有酸素運動と、血糖値の急上昇を避ける食事(精製された糖質を減らし、食物繊維を増やす)から、着実に始めていくことが現実的なアプローチになります。
PCOSをお持ちの方にとって、ダイエットは「見た目を変えるための努力」というより、「ホルモン環境を整えるための生活設計」として捉え直すことが、長続きへの近道になります。1人で抱え込まず、婦人科や内科、管理栄養士と連携しながら、自分に無理のないペースで進めていくことがとても大切です。
体が「再設計」を求めている更年期
閉経前後の体の変化期、いわゆる更年期を境に、体が変わり始める。同じ食事量、同じ生活リズムなのに、お腹周りが気になってしまう。鏡の前に立つたびに抱く違和感は、意志の問題でも努力不足でもありません。ホルモン環境の変化に合わせて、体の内側で起きている再構成のサインなのです。
ペニントン生物医学研究センターのラブジョイらは、閉経前の健康な女性156名を毎年測定しながら4年間にわたって追跡する観察研究を行いました。
追跡期間中に閉経した女性と、閉経前のまま経過した女性を比較したところ、閉経した女性のみに、体重、体脂肪、お腹の奥についた脂肪である内臓脂肪の有意な増加が見られました。さらに24時間のエネルギー消費量と、脂肪を燃やす力を示す脂肪酸化率も低下していたことが確認されています。
同じ量を食べても、閉経後は消費されにくく、内臓に蓄積されやすい体になっていたというわけです。

