いまのJR西日本に500系開発の精神は息づいているか、倉坂社長に尋ねてみると、こう述べた。
「私たちはJR本州3社の中で一番厳しい環境に置かれており、(他社以上に)努力をして、知恵を出して、地域や社会の発展に貢献しないといけない。それが(会社の)原動力になっています。今年の定時株主総会招集通知の表紙の写真に500系の写真を使いました。初期の頃のチャレンジ精神を持って、(さまざまな課題に)挑戦してきたことをもう一度、社員、そして株主のみなさまにもそれとなくお伝えするような意図を含めています」
引退が迫っているからタイムリーだという理由だけで表紙に使ったのではなく、倉坂社長の思いがそこに含まれていた。
独自車両の開発はあるか?
気になるのは、今後も500系のような独自の新幹線車両をJR西日本が開発するかということだ。倉坂社長はこの考えを否定する。「現在の山陽新幹線は東京から博多、そして新大阪から鹿児島中央まで相互直通運転をしています。共通の仕様でお客様にサービス提供するのが必要だと思いますので、今のところ新幹線について当社独自でということは考えていません」。
とはいえ、500系の進取の精神は、新幹線のみならず現在のJR西日本の隅々にわたって脈々と受け継がれている。鉄道事業では他社に先駆けて、カジュアルな夜行列車を開発し、予約がなかなか取れない人気列車となった。また、スタートアップ企業と組んで人型ロボット重機を開発し、完成後は設備メンテナンスの現場に投入した。
鉄道以外の事業でも、りそなグループとの資本業務提携や上下水道などの社会インフラマネジメントへ進出するなど、新たなビジネスに積極的に取り組んでいる。さらに、内勤社員の働き方についてもビジネスカジュアルを導入し「Tシャツ勤務OK」にするなど、JR他社を驚かせた。500系の進取の精神は、今後も形を変えながらこれからのJR西日本を力強く支えていくに違いない。

