私はこの手法には疑問を感じる。手付金を入れる時点で、買い手はすでに大きなリスクを背負っている。それに加えて、残額の支払い能力まで証明しろというのだ。いわば「審査」を通った者だけが、買う権利を与えられる。そして、その審査を通ることができるのはこれから富む者ではなく、すでに富んでいる人たちだ。
マンションを買うのに、こちらが物件を選ぶのではなく、向こうに買い手として選ばれる時代になったのである。
都心のマンションは、買い手のターゲットを完全に超富裕層へと絞り込んだ。
「資産価値」のゲームからは撤退すべき時期に来ている
私はここに、今の都心マンションの本質を見る。そのマンション自体のクオリティは当然素晴らしいが、それ以上に超富裕層を惹きつけるのは金融商品としての魅力だ。
希少価値に裏付けされた金融商品である以上、価格のボラティリティ(変動の大きさ)はきわめて高い。大きく上がる可能性があるということは、同じだけ大きく下がる可能性があるということでもある。
しかし、彼らは下がっても焦ることはない。なぜなら、東京都心の超高額物件の多くはキャッシュで買われている。あるいはローンを組んだとしてもそれは戦略的なものであり、ローン残高を上回る資産を保有しているのだから、多少下がったとしても動じることはない。
都心のマーケットは、もはや普通の人の手が届くものではなくなった。デベロッパーも販売戦略を変えた。世帯年収2000万、3000万円という、いわゆるスーパーパワーカップルでさえ、今の都心の一等地には手が出せない。
これが現実だと思うし、「資産価値」のゲームからは撤退すべき時期に来ているのだ。

