一方、後者の「超ローエンド」な技術は「サーバーサイド」方式と呼ばれるもの。つまり、ユーザーのお金の残高や決済の処理を、決済事業者が持つ巨大なサーバーで一括管理する方式です。
QRコードやバーコードをスマホで読み取ると、スマホが「私の口座から、このお店の口座へ〇〇円移動してください」という指示を、インターネット経由で決済事業者のサーバーに送ります。実際のお金の移動は、サーバー上で行われます。したがって、スマホそのものにはお金の価値は反映されていません。
ヨーロッパや北米では、古くからクレジットカードやデビットカードの文化が社会に深く根づいていました。そのため、キャッシュレス決済の進化は、この既存のカードインフラをいかにデジタル化し、利便性を高めるか、という方向で進んでいきました。
一方、日本においては交通系ICカードの「Suica」がすでに普及していたこともあって、クライアントサイドの「超ハイエンド」なサービスが一歩リードしていました。Suicaに代表される交通系ICカード、「楽天Edy」「WAON」「nanaco」など商業系電子マネー、「iD」「QUICPay」などの後払い式電子マネー……こう列挙してもいろんなサービスが出てきたものですね。
その間に、欧米とも日本ともまったく異なる決済システムの進化を遂げていた国がありました。それが、中国です。
近隣の大国で生まれた「しょぼい技術」の衝撃
2016年頃のことです。ヤフーの幹部とともに中国を視察に訪れた私は、衝撃的な光景を目の当たりにします。
高級デパートから、おばあちゃんが野菜を売っている屋台まで、あらゆる場所で人々がスマートフォンを使って支払いを済ませているのです。その、スマートフォンをかざす先にあったのは「QRコード」の印字された紙でした。
「なんだ? このしょぼい技術は!」
正直に言うと、はじめて見たときはそんな感想を抱きました。日本にはFeliCaという、スマホをかざすだけで決済ができるハイテクな非接触技術がある。それに比べて、わざわざアプリを立ち上げてQRコードを読み取るなんて……。
でも、じつはその「しょぼさ」にこそ、彼らのイノベーションの本質がありました。
FeliCaのような技術を導入するには、専用の読み取り機やICチップが埋め込まれたカード、携帯電話が必要で、導入コストが非常に高い。90年代から存在するデメリットを解消できていなかったのです。ゆえに、日本国内でも一部の大手チェーン店でしか普及していませんでした。
一方で、QRコード決済はどうか。お店側は、QRコードを印字した紙をレジ横にペタッと貼っておくだけ。ユーザーは、カメラ付きのスマホさえ持っていればいい。導入コストはほぼゼロです。

