鉄道の運行指令所と列車の運転士・車掌が連絡を取り合う代表的な通信手段は「列車無線」である。固定電話に似た外観で、指令所内の各デスクに置かれているほか、列車内には先頭車両の運転席と16両編成の列車の中央にあたる8号車にある乗務員室に設置されている。
鉄道総合技術研究所によれば、1926年から1929年にかけて東海道線の大井町―小田原間で電信・電話の実験が行われたのが日本で最初の対列車通信だという。東海道新幹線では1964年の開業時に、高速で走行する新幹線の列車と高品質の通話を可能にするシステムが整備された。
無線と名前が付いているが、長距離を電波でつなぐわけではない。線路に沿ってケーブルが敷設されており、ケーブルの各所に電波を漏洩するための穴が開けられている。列車は近くにある穴から漏れた電波を送受して情報をやり取りする。列車のアンテナとケーブルの穴が常時近接しているために他電波の干渉を受けにくく、安定した品質が保てるという。
列車無線「音声はクリア」
列車無線の音質はどうか。「クリアに聞こえますよ」と、JR東海の江村彬宏列車長が教えてくれた。「音声はクリアですが、間違いのないように重要なことは必ず復唱します」。今回の取材で、江村さんは新幹線の乗務員の対応について説明してくれた。では、総合指令所では列車無線がかかってくるとどう対応するのか。
「旅客指令伊藤です、1Aさんですね」――。
列車から無線で総合指令所に連絡が来ると、呼び出し音がビビビと鳴って、卓上のディスプレーにたとえば“1A”といった列車番号が光る。指令員は受話器を取って自分の名前を名乗り、相手が1Aの車掌であることを確認する。手順を説明してくれたのはJR東海の伊藤貴博・旅客指令当直長。総合指令所の指令員には運転士と列車運行情報をやりとりする列車指令、車掌と旅客輸送情報をやりとりする旅客指令など、さまざまな役割がある。伊藤さんは旅客指令である。

