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台湾で急拡大する「ゾンビたばこ」問題 事故多発で進む規制強化と厳罰化、その背景にある社会と政治の現実

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台湾では「ゾンビたばこ」呼ばれるエトミデートの服用による交通事故が多発している(写真:KAI/PIXTA)
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現在はこうした反省を踏まえ、道路設計そのものを見直す「人間中心の交通」への転換が、政府や自治体を中心に進められている。しかし、そのような中で違法薬物問題が新たな課題として浮上し、交通安全対策をさらに複雑なものにしているのである。

台湾は、アジアでも特に厳しい薬物規制を維持している地域として知られている。その背景には、中華圏全体が共有する歴史的な記憶と、近代以降の統治経験が深く関わっている。

19世紀、中国大陸の清国はイギリスから流入したアヘンによって国家財政や社会秩序、公衆衛生に深刻な打撃を受けた。そして最終的にはアヘン戦争を経て不平等条約の締結を余儀なくされた。この歴史は、台湾を含む中華圏において「薬物は国家を弱体化させる重大な脅威である」という強い教訓として現在も語り継がれている。

違法薬物に敏感にならざるをえない歴史

1895年に日本による台湾統治が始まった当時、台湾には約17万人のアヘン常習者が存在したとされる。初代民政長官の後藤新平らは、新たな吸食者の発生を防ぎながら既存の使用者を段階的に減らしていく「漸禁政策」を実施した。許可制による管理と厳格な取締りを並行して進めた結果、アヘン問題は統治期間を通じて大幅に縮小した。

戦後に台湾へ移った国民党政権も、薬物問題を国家安全保障や社会秩序に関わる重大な問題として位置付けた。そのため、密造や密売に対しては死刑を含む重い刑罰を維持し続けており、この基本姿勢は現在まで受け継がれている。

一方で、1980年代以降の薬物事情を見ると、台湾で流通する違法薬物は「伝統的な麻薬」から「化学合成薬物」へと大きく移行してきたことが分かる。

1980年代から1990年代の経済成長期には、長時間労働を支える目的などからアンフェタミン(覚醒剤)が労働者や若年層を中心に急速に広がった。また、海外から流入したヘロインの乱用も深刻な社会問題となった。

2000年代から2010年代にかけては、クラブやKTV(カラオケボックス)などの夜間娯楽産業の発展とともに、ケタミンやMDMA、エクスタシーなどのいわゆる「パーティードラッグ」が若者を中心に浸透していった。

さらに2020年代に入ると、複数の合成薬物を混ぜて市販のお茶やコーヒー製品に偽装した「薬物コーヒーパック」や、今回問題となっているエトミデートのように、既存の法規制を回避しようとする新型の合成薬物が目立つようになっている。

こうした状況の中で、台湾はヘロインなど第1級薬物の新規使用者を大幅に減少させることには成功した。しかし現在では、合成が容易で安価な新型薬物やその類似物質が次々と登場している。そのため、「法規制が整備される速度」と「密造組織が新たな化学物質を生み出す速度」の間で、いたちごっこが続いていると指摘されている。

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