東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #ホットイシュー

台湾で急拡大する「ゾンビたばこ」問題 事故多発で進む規制強化と厳罰化、その背景にある社会と政治の現実

11分で読める
台湾では「ゾンビたばこ」呼ばれるエトミデートの服用による交通事故が多発している(写真:KAI/PIXTA)
2/5 PAGES
3/5 PAGES

さらに、人口約2300万人に対して登録バイク数は約1400万台に達している。単純計算では約1.6人に1台となり、長年培われてきた「バイク文化」の根強さが、自動車やバイクの利用を減らす上で大きな要因になっていると考えられている。

ちなみに、日本では交通事故死亡者の中で歩行者や自動車乗車中の割合が比較的高いのに対し、台湾では死亡者の6割以上をバイク運転者や同乗者が占めている。

台湾当局はこれまで、ヘルメット着用義務化、二段階左折制度の導入、飲酒運転の厳罰化、さらには法制度の「歩行者優先」への見直しなど、さまざまな安全対策を実施してきた。その結果、死亡者数は最悪期と比べて半分以下にまで減少している。

「3つのE」の不足が交通事故の温床に

一方で、これらの施策はヘルメット着用や飲酒運転対策など、個人の行動に対する規制や取り締まりに重点が置かれてきたとの指摘もある。道路設計や歩行空間の整備といったインフラ面の課題については、近年まで十分な改善が進まなかったとする見方も少なくない。

日本では歩道と車道が明確に分離され、ガードレールなどによって歩行者の安全が確保されている場所が多い。一方、台湾では歩道の段差が多かったり、バイクの駐輪によって通行が妨げられたり、アーケード部分に店舗の商品や設備が置かれたりすることで、歩行者が車道を歩かざるをえない場面も見られる。また、歩道と車道の境界が分かりにくい道路も少なくない。

さらに日本では、横断歩道に歩行者がいれば車が停止するという意識が、近年の取り締まり強化もあって広く浸透している。一方、台湾では長年にわたり自動車やバイクを優先する運転慣行が残っていたことが、歩行者事故の多さにつながっているとの指摘がある。

台湾の交通専門家や中央研究院の研究などでは、「3つのE」の不足が交通事故の温床になっていると指摘されている。

1つ目は「Engineering(道路工学)」である。台湾の交差点には、左折レーンが十分に整備されていない場所も多く、直進車、左折車、そして直進するバイクが交差点内で錯綜しやすい。また、交差点の角に視界を遮る構造物が存在し、歩行者の発見が遅れるケースもある。

2つ目は「Education(交通安全教育)」だ。台湾の運転免許制度は日本と比べて取得しやすいと指摘されることが多い。長年にわたり、危険予測や歩行者保護に関する実践的な教育が十分ではなかったとの見方もあり、安全意識の向上が課題とされている。

3つ目は「Enforcement(法執行)」である。重大事故が発生すると警察は集中的な取り締まりを実施するものの、時間の経過とともに緩む傾向があると指摘されてきた。また、違反点数制度や罰則強化を巡っては、タクシー業界や物流業界などから反発が起こり、政治的な調整の結果として一部制度が緩和された例もある。

4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象