コスタリカも1838年の独立後、中米諸国のお家芸とも言える軍事クーデターを繰り返していた。しかし、そうした内戦に勝利した指導者フィゲーレスが、1949年に制定した憲法で、独裁と内戦の原因となってきた軍隊の廃止を宣言したのだ。そして、独裁と内戦に疲れ切った国民もこれを熱狂的に支持した。
現在のコスタリカは、平和を外交の道具として自国の安全を保証する「積極的平和」を推進している。これは単に戦争に反対するだけでなく、民主主義・自由・人権・環境保護を実践し、平和を能動的に創り出すという概念だ。コスタリカは、自らがその見本となるべく、積極的平和を実践している。
民主主義の視点では、汚職防止のため大統領や国会議員の連続再選を禁止しており、二世議員はほぼいない。政党の結成も自由で国内には50以上の政党があるそうだ。報道の自由度についても38位(日本は62位)と高い(国境なき記者団、2026年)。
人権保護にも積極的に取り組んでいる。コスタリカは1949年の憲法から女性と黒人の政治参加を認めているのだが、アメリカで公民権運動の後に黒人の投票が法律で保護されたのは1965年、コスタリカの16年後だ。また2020年には、同性婚も公認している。
ちなみに人権だけではない。動物の権利も重視している。スポーツ目的・娯楽目的の狩猟は禁止され、病気の動物の保護義務もある。高速道路で怪我した動物を放置すると逮捕されると聞いた。
またコスタリカは、中米諸国の紛争の調停役を買って出るなど「平和の輸出」により国際的な地位を高めている。こうした平和への貢献が認められ、国連も首都サンホセに国連平和大学を設置している。
このようにコスタリカは「積極的平和」を前面に打ち出す外交により、自国の安全を保証しているのだ。他の中米諸国には武力介入を辞さないアメリカも、民主主義の大義を掲げるコスタリカに対しては、安全を保証する後ろ盾となっている。
教育と環境保護で豊かになった「幸福の国」
軍事予算は世界平均で政府支出の7%を占めるとされるが、その支出を不要としたコスタリカは、その分を医療、福祉、教育、環境保護に回している。
医療と福祉については、充実した国民皆保険制度が整備され、医療へのアクセスも比較的手厚い。
教育については、大学まで含めて無償。義務教育では2カ国語が必修だそうで、流暢な英語を話す人も多い。高度人材を求めて自由貿易区(フリーゾーン)には医療機器や半導体といったハイテク企業が進出しており、その輸出額はコスタリカの全輸出の約半分を占めている。
また、コスタリカは豊かな自然環境の保護と活用を、自国の競争力強化に結びつけている。たとえば、たくさんの旅行者の落とす観光収入は、コスタリカのGDPの1割近くに達している。
コスタリカは農業も盛んだが、環境保護の観点から世界に先駆けて有機農業を推奨した。そのためコーヒーもバナナも競争力ある輸出産業となっている。また水資源にも恵まれているので、電力のほぼ全量を水力発電など自然エネルギーで賄うことができている。

