こうした努力もあり、コスタリカの一人あたりGDPは、2.0万ドル(IMF、2026年)と、先進国には及ばないものの、中国(1.5万ドル)やタイ(0.8万ドル)を超え、隣接するニカラグア(0.3万ドル)やホンジュラス(0.4万ドル)の数倍に達する。教育や自然環境をうまく産業育成に結びつけた成果だともいえる。
物質的にはそれほど豊かとは言えないかもしれないが、自然に恵まれ、強い産業もあり、教育や医療の心配がない。そしてなにより、政治を自分自身で選んでいるという自信が、冒頭に述べたような高い幸福度の背景にあるのだろう。
実際に、ツアーのドライバーと話すと、彼らは自国の民主主義に大きな誇りを持っていた。自分たちが政府を選んでいるのだと語っていた。もちろんコスタリカにも貧困などの問題はある。しかしこのように、「自分たちの未来を自分達で選ぶ」という主体感が、幸福度を高めているのだろう。
今回の旅はとても充実したものとなったが、さすがに日程は不足気味だった。次に訪問するときには、もっと時間をとって旅しようと思う。コスタリカのエコ・ツーリズムはまだ開拓途上だ。移動途中には悪路も少なくなかった。しかしあと10年もすれば、公園の整備がさらに進み、移動もより快適になり、環境に配慮したサステナブルなホテルも増え、さらに多くの海外観光客を迎え入れていることだろう。
今回の1冊
人を変えるのは「人・本・旅」、という立命館アジア太平洋大学(APU)学長特命補佐・出口治明氏の言葉にあやかり、この連載では毎回関連する本を紹介している。
今回紹介するのは、コスタリカを紹介する数少ない一冊である足立力也氏の『丸腰国家』(扶桑社新書)。コスタリカの国民が「積極的平和」を選択し、創りあげてきた歴史と内容を紹介する本だ。
日本も戦後、長く直接の戦争を経験せず、平和を実践してきた稀有な国だ。この事実は国際的にもっと誇るべきことだろう。しかし、政治を敬遠してしまい、他人事のように斜に構えたり、ましてや匿名で批判するだけでは、政治も生活も良くならない。それどころか、自らの幸福度も下げかねない。
自分自身の社会や政治への参加のありかたを考えさせる本でもある。

