東洋経済オンラインとは
ライフ #香道、世界へ

「聖域を侵されるわけにはいかない」…550年続く志野流香道の二十一世家元が「正統」を強調する深刻な事情

6分で読める 有料会員限定
聞香する志野流二十一世家元の蜂谷宗苾氏(撮影:瀬尾浩司)

INDEX

東山文化と現代は一直線でつながっている

2026年5月末、初夏の京都・東山。新緑に包まれた慈照寺(銀閣寺)の研修道場では、歴史的な転換点となる儀式が執り行われていた。室町時代から550年にわたり、「一子相伝」の血脈を守り続けてきた香道「志野流」の二十一世家元襲名を記念する聞香会である。

襲名は25年3月に銀閣寺東求堂(とうぐどう)で父と子だけで行われたが、今回の聞香会は蜂谷宗苾氏が新しい家元として、多くの客人をもてなす場となった。

これに合わせ、銀閣寺にほど近い白沙村荘(橋本関雪記念館)では、『香道の正統 ─志野流五百五十年 一子相伝の血脈』と題された特別展を開催(6月1日から7月26日まで一般公開)。歴代家元が命を賭して守り伝えてきた貴重な香道具や書物、そして時を越えて妖艶な芳香を放つ香木を惜しみなく公開している。

合わせて、宗苾氏が監修した『香道の正統 志野流香道の世界』(淡交社)も発売された。これは志野流香道の歴史とこころ、組香などを紹介するビジュアルブックだ。

蜂谷宗苾(はちや そうひつ)/室町時代より、20代550年にわたり香道と茶道を継承してきた志野流前家元幽光斎宗玄の嫡男。2025年3月、志野流発祥の地、京都・慈照寺にて二十一世家元となる。25歳のとき脳腫瘍で倒れ、失明前提で10時間の開頭手術、その後、奈良の山中に住す大徳寺五三〇世住持泉田玉堂老大師のもとに1年間身を置く。下山後は、香道具を背負い一人世界を飛び回り、香道という日本独自の香り文化を通し各国との交流、現在も香りによって人と人、世界をつなげる思いのもと各地で活動を行っている。文化庁海外文化交流使、一般社団法人日本文化継承者協会理事、一般社団法人日本ソムリエ協会名誉ソムリエ、フランス調香師協会名誉会員(撮影:瀬尾浩司)

宗苾氏は伝統の世界に引きこもっているわけではない。若き日はバックパッカー。今でも世界中を飛んで回り、聞香会を開いている。そんな二十一代目は「香道には世界平和を実現する力がある」「世界を香りでラッピングしたい」と驚くようなことをサラリと言ってのける。

51歳を迎えたばかりの宗苾氏との対話から浮かび上がってきたのは、過去500年の歴史を背負いながらも、次の500年を見据えて世界へ打って出る、一人の「文化のフロントランナー」の凄絶な覚悟だった。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象