その後も、三重弁の解説動画、家族のナレーションを入れる、姪の登場ーー。そのたびに反響を確かめ、また次の手を考える。試行錯誤の末に行き着いたのが、「ヤバイ」というワードだ。
食べ物を扱う店が“ヤバイ”と投稿すると、「何がヤバイんだろう?」と最後まで動画を見てしまう。第1弾の「ヤバイ、パイナップル」動画は、148万再生に着地した。
「ヤバイ」も「やらかし」も、大手企業のSNSでは使いにくい言葉だ。しかし、「大手のPRでできないことは、個人商店ではやりやすい」と良平さんは確信を持って言う。隙を見せる、失敗を笑いに変える、本音を出すーー。その「人間くささ」こそが、フォロワーの心をつかむのかもしれない。
さらに、「商品がまだ残ってます」と追加でストーリーズを投稿すると電話がかかってくる。「今残ってる〇〇を取り置きしてほしいです」。画面の向こうで、地域の誰かがヒライの今日を気にかけている。
飾らず、人間くさく、素直な発信に切り替えたことで、20〜60代の客層も加わった。発信の前と後で、店の景色がまるごと変わったのだ。
この発信を一手に担う良平さんには、実はもうひとつの顔がある。
「三重には何もない」と思っていたが…
良平さんは「ふがまるちゃん」という名で活動する写真家でもある。 かつての良平さんは「三重なんて何もない」と思い込み、カメラを向ける気にもなれなかった。
だが、ある日見た海に心を動かされる。
「三重の海って、こんなに綺麗なんや」
その日から県内を撮り歩き、店の壁に写真を飾ると常連客は大喜び。「次はここを撮って」「本にしてほしい」と声が上がり、客の要望で自費出版した写真集は完売。後に商業出版も実現した。
撮影した写真は三重県の市町村や観光協会に無償で提供し、花火のポスターや大阪万博の三重ブースにも使われた。
「三重県の写真は、自分のものじゃない。その場所を盛り上げるために撮っているんです」
