「なぜ私の意識が戻ったのか、今でも理由はわかっていません。でも家族とは、子どもを産めなくなるのが本当に嫌だったのかもね、なんて話しています」
目覚めたとき、Aさんの身体はたくさんの管につながれ、手も拘束されていた。気管切開されているため、声も出せない。頭の中は真っ白だったという。
「目覚めた直後、自分が誰なのかが本当にわからなかった。天国に行ってしまったのかと思いました。でも、慌てて病室に入ってきた家族の顔を見て、あぁ、そういえば私はAだったなって、少しずつ理解していきました」
「不安に押し潰されそう」意識回復も新たな苦しみが…
意識がはっきりしてくると、いろいろな感情が湧いてくる。だけど喋れないし動けない。全然伝わらない。それがつらかった。
「自分がこれからどうなるのかわからないまま、ただ時間だけが過ぎていく。何もせずに時間を過ごすことがとにかくつらかったです。毎日ひたすら同じ天井を見ながら、不安に押し潰されそうになりました」
1カ月ほど経ち、ようやく気管切開を閉じる処置が行われた。そこから、筆談、発声、食事、歩行と、Aさんのリハビリが始まった。
「最初の頃のリハビリは、ベッドの上で四つ這いの姿勢を保つだけ。それだけで、周囲の人たちが、すごいね!できたね!って言うんです。
24歳でハイハイみたいな姿勢をして、周りの大人に褒められるなんて……。自分は赤ちゃんに戻っちゃったんだ、なんて思っていました。今思えば、かなり卑屈ですね(笑)」
