また、提供される料理の出典、物語もプロジェクターで各自のお皿に投影され、食事と同時に文化を楽しむ感覚に没入させられる。中国人から見ると、昔の中国のことを現代風に表現されて理解も深まる。
外国人観光客向けに英語字幕もついているが、行ったことのある日本人は「(メニューが事前に入手できるので、その中に書いてある)中国の古典を少し予習すれば言語がわからなくても充分楽しめる。10時に着いて着替えて撮影を楽しみ、ご飯が終わったのは14時過ぎ。あっという間ですごく楽しかった。圧倒された」と教えてくれた。
1番前の席だと一人約2万円で決して安くはないが、予約はいつもいっぱいのようだ。
日本から見ると「文化」というにはちょっと本格さが足りないかもしれないが、惹きつけるパフォーマンス、インターアクティブな進行、分かりやすい料理の紹介など、特に若者にとってとっつきやすい内容になっており、地域ないし中国のもっとディープな文化を理解することにつながる。
日本の観光は「見るだけ」
現在の中国の若者や若い富裕層たちは、リテラシーがあり、自分のための消費を惜しまない。国内では、博物館のプライベートガイドをお願いしたり、美的センスが合うホテルを選んだり、関心のあるイベントに一擲千金(いってきせんきん:惜しみなく大金を投じること)する。
日本に来て安いビジネスホテルに泊まることもあるが、好きなガチャガチャやフィギュアに平気で50万円使うし、好きな作家の作品だったらカップ1個8万円でも買う。観光地は、彼らのニーズに合わせるために、SNSを駆使してストーリーを描き、没入体験ができるようなインフラやNPC(ディズニーランドのキャラクターのような、コスプレをしたり、客と交流したりして楽しんでもらうスタッフ)育成に投資している。
最近の日本も、没入型のアトラクションや、伝統文化のパフォーマンスが入っているパフォーマンス・レストランが少しずつ増えているが、規模は小さく、観光客は観るだけのケースがほとんどである。
中国人に限らず、全世界の観光客が日本に求めているのは、円安による割安感だけでなく、心を動かし、精神的な満足を得られる文化体験ではないだろうか。
日本は観光大国に向けて、今こそ自国が持つ真の魅力を再定義し、その価値を世界に向けて発信し直す好機ではないかと思う。
