世界中で「働く女性のバイブル」と呼ばれた前作『プラダを着た悪魔』から20年。筆者の仕事人生は蛇行しっぱなしで、学生時代にふわっと憧れていた「都会でバリバリ働きたい」とのイメージからは大きく離れてきた。
新卒で入社した会社で地方勤務となり、結婚し、配偶者の転勤で住む場所を転々とした。専業主婦をしていた期間もある。フリーランスのライターとして活動し始めたのは、6年前のことだ。そして、今は3児の母をしながら、もう一度仕事にギアを入れ直そうと、就活めいたことも試みている。
この映画が今の私たちに刺さるのは、おそらく、登場人物たちと同じ20年を観客もまた生きてきたからだ。重なって見えるのだろう。
結婚、出産、転勤、子育て、復職、再起、介護が関わってくる人もいる。それぞれの人生を観客も、演者も、そして作中のキャラクターたちも歩んできたはずだ。
エミリーが、出張先のイタリアのホテルから、娘とビデオ電話をする場面があった。ミランダが「子どもたちの成長を見られなかった」とこぼす場面もあったし、アンディが「卵子凍結をしている」と話す場面もあった。20年を生き抜いてきた女性たちの姿が、リアリティを持って迫ってくる。
登場人物たちが「自分とかけ離れたところにいる」と感じた前作よりも、キャラクターたちの心の揺れ動きが感じられたからかもしれない。
登場人物たちが、不器用に生きながらも、それでも働くことが好きでやめられない。「ここまで仕事を好きでいられるか」「仕事を好きだと言えることが羨ましい」と考えながら、映画館を後にした。否が応でも、自分の仕事や生活と向き合いたくなる。
映画が終わりスマホを開くと、子どもからお菓子作りをしたという写真が送られてきていた。映画の主要キャラクターたちは、「仕事が好き」とはっきり言葉にしていたが、自分は子どもと向き合う時間の多さを選んだのだと、改めて実感した。
"対人で得る感覚"の大切さ
作中で描かれていた雑誌「ランウェイ」存続の危機は、出版業界の斜陽というだけの話にとどまらない。Web時代における“価値ある仕事”のあり方も、本作には描かれている。
本作には、書き手として強く印象に残るシーンがいくつもあった。
アンディが、「ランウェイ」に復帰後、特集ページで骨太の記事を書く。だが、PVが思うように伸びない。結果が出せずに焦ったアンディは、どの媒体からの取材依頼も拒否する大物への取材を「できる」と勢いで口にしてしまう。
