実際にはアポも取れていない状況から、あらゆるつてをたどってインタビューを実現させる。そして物語の終盤、ランウェイそのものを救う手を差し伸べる人物となるのだ。
人と直接会い、対話を重ねて得た関係性が、行き詰まった状況を打開する伏線として効いていた。
オンライン化、デジタル化、そしてAIによる業務代替が進む今、対人で得る感覚や関係性の価値は、むしろ重みを増している。あらゆる職種において、画面の前で完結する仕事が増えるなかで、それでも人と直接会い、対話を重ねることでしか得られないものがある。
アンディが取材を通じて大きな打開策をつかむ展開は、ウェブメディアの書き手である筆者にも地続きの感覚だった。人と人が向き合うことの意味を、物語の展開で示してくれていたと感じた。
“揺れ続ける生き方”を、本作は肯定してくれる
物語のラスト近く、アンディの心をぎゅっとつかむある事実が、ナイジェルより明かされる。人と人の間に築き上げてきた信頼の重みをしみじみと感じさせる、筆者も一番好きなシーンだ。
働くうえでこの関係性ほど羨ましいものはない。迷いながらも一緒に歩んでくれる仲間がいることは、アンディにとって前に進む原動力になっている。
ミランダもまた、アンディに対して、ラストである選択肢を差し出す。以前のミランダは絶対にしなかったようなことだ。そしてそれを受けたアンディの返答もまた、かつては選べなかった言葉だった。これらのやり取りは、ぜひ映画館で確かめてほしい。
誰しもが、迷いながら、それでも前に進み続けている。それぞれの形で立ち止まったり、戻ったりしながら歩いてきた自分を、なかなか肯定しきれずにきたからこそ、作品に共感するし、パワーをもらえるのかもしれない。ここから先も、彼らそれぞれの人生があるのだなと感じさせられる。どこかで、その人生が続いているかのような感覚すらある。
「迷いながら続けるという生き方」を、本作は静かに肯定してくれている。「働きたくない」と言いながら、こうしてコラムを書きたくなるほどに、動かされた作品だ。
