だからエピソードごとに、どこまで説明し、どこまで雰囲気に任せるかを細かく調整していったといいます。
この発言は、「海外っぽさ」の正体をそのまま言い当てています。海外ドラマが視聴者を引きつける核心は、映像のクオリティだけではないのです。説明しない勇気、余白を信頼する物語の作り方にあります。
本作はその狭間で、どちらにも完全には振り切れなかった。それが、視聴者の反応が割れた理由だったように思います。
日本とフィンランドの共通点
そもそも、なぜ日本とフィンランドが組んだのかも気になります。タンペレ現地で取材したフィンランド側の制作会社ICS Nordicの共同創業者イルッカ・ヒュンニネンは、こう話していました。「フィンランドは孤立した市場で、フィンランドのストーリーが本来あるべきほど広く伝わっていません。日本も同じだと思う」。
この言葉は、今回の共同制作の本質を突いています。世界的に見れば、日本もフィンランドも、自国のコンテンツを外へ届けることが得意ではない国同士です。優れた物語があっても、届かない。その課題を共有しているからこそ、対等に組む理由があったというわけです。WOWOWにとって『TOKYO VICE』に続く国際共同制作の第2弾となる本作は、そういう文脈の中に生まれています。
そしてトイヴォネン監督は、この挑戦の意味についてこんな言葉も残していました。「海外を意識することが、結果的に日本の作品自体もアップデートする」と。
『BLOOD & SWEAT』は、惜しさもある作品でした。それでも、いまの日本のドラマが直面している問いを正直に体現している一作だと思います。映像を変えることができた次は、日本ドラマが本来持っている人物の温度を保ちながら、余白を信頼する語り口を手に入れられるかどうか。
「海外ドラマみたい」は褒め言葉です。ただ、その言葉だけではもう驚けないところまで、日本の視聴者も来ているのではないでしょうか。
