それを募集強化で補うのは無理でしかない。最近になって採用年齢を32歳まで広げたが効果は限定的だ。大抵の場合、30歳を超えれば職歴や生活がある。それを捨てて兵隊になる者は、ほとんどいない。
しかも、募集の焦点である兵隊は年季契約なのでまったく魅力はない。2士から士長、昔の軍隊の階級で言えば二等兵・二水から兵長・水長は終身雇用ではない。最初は3年、以降は2年ごとの契約更新なので就職先に求められる安定性を欠いている。
実際に自衛隊側が気に入らなけばお払い箱にする。それも年齢を理由にアッサリ切る。昔は「40歳になるのにセーラー服というわけにもいかない」や「若手下士官が戸惑う」程度の理由で切っていた。自衛隊は労働法規の適用外で団結権すらないため、それがまかり通るのだ。募集強化による人員充足は夢物語でしかないのである。
募集強化の成功は日本社会にとって害悪
第2は、社会に悪影響を与えることだ。仮に募集強化が成功すると、そのときは社会にとっては逆にマイナスとなる。その点からも適切な施策ではない。
人口減少社会では労働力は重要資源となる。若く健康な人材は貴重だ。その若手を自衛隊が囲い込むとどうなるか。今後、18歳と22歳の新卒者は年間100万人を切る。うち男性も50万人はいない。そこから1万人を抜き出したらどうなるか。
他業界が困る。同じように若手が必要な企業や公務員、研究、教育、医療、物流に悪影響が生じる。企業による商品の供給や公共サービスの提供を厳しくしてしまう。
もちろん、自衛隊の隊員不足は本物である。すでに実働で力は削がれている。そのため訓練や各種業務は回らなくなっている。
ただ、それは他分野も同じだ。企業や官庁、大学や学校、病院もまた機能維持に汲々としている。
そして、自衛隊だけを優先する理由はない。実際のところ日本周辺の状況は安定している。予算増のために政府や防衛省が進める不安商法、「安全保障の環境はますます厳しくなっている」を真に受けてはいけない。中国を見ても北朝鮮を見ても、日本に戦争を仕掛ける兆しは見えない。
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【自衛官員の質的低下を招く】
