まずディープフェイク対策としては、顔を横に向けさせたり、カメラに手をかざしたりなど、ディープフェイクが苦手とされる動きをオンライン上で確認する手法があるだろう。
こうした対策も、今後の技術発展によっては時代遅れになる可能性が想定できるが、その時々の最善の対策を行うしかない。
またリモートでの遺言作成では、保管官が画面越しに周囲の状況を確認する運用も想定されている。画面外からの指示や不自然な目線移動があれば、リモートを中止して対面でのやり取りを求めるという仕組みだ。これは、身内が画面外で本人を誘導するケースへの対策となる。
遺言書を残す人がおさえるべき基本のキ
いずれにせよ根本的な対策は困難だが、だからこそさまざまな対策を組み合わせる必要がある。
ケースによっては、オンラインで完結する手続きに一定の制限をつける必要もあるだろう。今後正式に成立するデジタル遺言制度には、こうした課題への対応を求めたい。
最後に、遺言書を残そうとするユーザーができることを挙げておきたい。まず基礎的ではあるが、自分のデジタル資産の目録を作成し、重要なアカウントや契約の所在を家族が把握できるようにすることだ。
とくにスマホへのアクセス情報は、身内による代理操作やなりすましを防ぐためにも、対象者を絞っておく必要がある。
身内に対してそこまで警戒が必要かと感じる読者もいるかもしれない。しかし遺言をめぐるトラブルは、今も昔も、見知らぬ他人より近しい人間との間で起きることが多い。
デジタル化は遺言書の作成を後押しし、高齢社会の相続問題を解決しうる重要な改革だ。その一方で、便利になったがためのリスクも生まれる。リスクを理解し、不完全さを前提に制度と付き合うリテラシーが求められる。


