危険度の高い地域に住んでいるからといって、それを本人の無計画さによって説明することはできません。とくに、長年その土地で生活基盤を築いてきた人にとっては、リスクが高いと分かっていても、簡単に移転できない現実があります。
防災対策が十分に機能しないこともある
また、十分な災害対策を講じるためには、時間的・経済的な余裕が必要です。非常用備蓄を整えるにも費用がかかり、住宅の耐震化や浸水対策には相応の資金が必要となります。
高齢者や障害のある人、単身世帯や子育て世帯など、日常生活の維持だけで手一杯の人にとっては、防災の優先順位を高く保ち続けること自体が難しい場合もあります。
さらに、災害の規模や発生の仕方は、個人の想定を超える場合が少なくありません。予想外の降雨量や地震動によって、防災対策が十分に機能しなかった例は各地で報告されています。
事後的に見れば「もっと備えていれば」と言える場面であっても、事前に全ての事態を正確に予測し、対処することは、現実的には不可能なのです。
災害被害を自己責任の文脈で語ることは、社会の側で取り組むべき課題を後景化させます。
防災インフラを整備すること、危険情報を分かりやすく提供すること、避難所の環境を改善すること、そして要配慮者への支援体制を構築することなど、個人の努力では困難でも、制度や環境の改善によって被害を減らす取り組みも少なくありません。
もちろん、災害に対する備えの意識を高めることも重要ですが、それだけが全てであると考えていると、いつか自分自身も困ったことになりかねないのです。

