よく「誤嚥性肺炎はクセになる」と言われるのは、最初の誤嚥性肺炎をきっかけにして、食べる力や体力が落ち、再発するケースが多いからです。
しかし、私にいわせると、誤嚥性肺炎がクセになるわけではありません。誤嚥がクセになっているのです。のどの不調をそのまま放置してしまい、肺炎という症状が出るまでこじらせてしまう――これさえ防げれば、肺炎になるリスクは大きく下げられます。
家族も"わずかな変化"に気づけるように注意して
誤嚥性肺炎がここまで広まった理由には、社会の理解不足もあります。みなさんは、食事がのどに詰まったり、むせたり、飲みこみに時間がかかったりするのは「年をとったのだから仕方がない」と思っていないでしょうか。
誤嚥性肺炎発症から死に至るまでの道のりは、とても静かで、段階的です。最初は、少しむせやすくなるだけ。しかし、しばらくすると食事に時間がかかるようになり、水分でもむせることが増え、痰が絡みやすくなります。
それでも本人は「年をとれば誰でもこうなる」と受け止めます。家族も「ちょっと食べづらそうにしているだけで、元気だから大丈夫だろう」と深く考えません。そうしているうちに、誤嚥を頻繁に起こすようになり、ある日、肺炎として表面化してしまうのです。
たしかに、年齢を重ねると体の機能は衰えますが、衰えと病気は同じではありません。
あなたの体に起こっているのどの不調は、誤嚥性肺炎の入り口になる危険性があります。それを「仕方ない」と片付けてしまうと、対処の機会を失ってしまうのです。
誤嚥は痛みをともないません。そのため、「自分は大丈夫だ」と思ったまま、リスクが積み重なっていきます。家族や周囲が変化に気づき、声をかけることが、命を守るきっかけになるのです。
ここまでは、誤嚥性肺炎の恐ろしさについて説明してきました。しかしながら、誤嚥性肺炎は不治の病ではありません。1度かかったら一巻の終わりという病気ではないのです。
治療自体も特別に難しいわけではなく、抗菌薬を投与し、点滴や酸素投与を施して、全身管理をおこなうだけです。薬が効けば、早ければ数日から数週間で肺炎は治まります。肺炎が完治したあと、日々の生活を見直すことで回復し、元の生活に戻っている方もたくさんいます。
