しかし、高齢者は肺炎になっても、免疫反応が弱まっているので、高い熱があまり出ないことがあります。平熱か微熱で、その発熱も一時的なものですぐに下がったりします。
咳をする力やのどの感覚も弱まっているので、激しい咳も出ません。肺の中では細菌が増え痰も生じているのですが、これを外に出すことができません。高齢者に多い肺炎の症状は、なんとなく「食欲が落ちた」「元気がない」「歩くのが不安定になった」といった、ぼんやりした変化です。
肺炎が起こると体がエネルギーを消耗するので、体には倦怠感が出ます。それが食欲や体調に影響を与えます。歩くのが不安定になるのは、肺炎による酸素不足が原因です。
このように、自覚症状が薄いので肺炎はそのまま進行していき、気づいたときにはかなりの重病になってしまいます。病院にかかると、即入院と診断され、酸素吸入が必要になることも珍しくありません。
「肺炎」と「誤嚥」は切り離して考えることが重要
誤嚥性肺炎がやっかいなのは、治療によっていったん炎症が治まったとしても、それで問題が終わるわけではないところにあります。
抗菌薬によって肺の炎症が落ち着き、熱も下がり、血液検査の数値も改善すれば、医者は「肺炎は治りました」と告げます。しかし、肺炎は治っても誤嚥しやすい体はそのまま、もしくは以前よりも誤嚥をしやすい状態になっていることもあります。
そのため、1度治ったのに、1年以内に誤嚥性肺炎を再発する患者さんも珍しくありません。私も、患者さんのカルテを見て、「去年も肺炎で入院されていましたね」「半年前にも同じような経過でしたね」とやり取りすることがよくあります。
病気を治すために入院は必要ですが、高齢者の体にとっては大きな負担になります。ベッドで過ごす時間が増えると、足腰の筋肉は急速に弱ります。数週間の入院でも、筋力は目に見えて落ち、退院後には「前のように歩けない」「立ち上がるのが怖い」と感じる人が少なくありません。
そしてこの筋力低下は、歩行だけでなく、のど周辺の飲みこみの力にも直結しています。
入院すると食事量が減る方は多くいます。体調不良や環境の変化、食欲低下によって、満足に食べられない日が続くと、栄養状態は悪化します。栄養が不足すれば、やはり筋肉は劣えます。
