これだけよくできた機能なのに、なぜ誤嚥が起こるのでしょうか。それは、この繊細でスピーディーなのどの一連の動きのどこかに、ズレや力不足が生じるからです。
喉仏を持ち上げる筋肉が弱ると、気道の蓋が閉じる前に食べ物が落ちてきて、一部が気管へ流れてしまう。もしくは、飲みこんでいる間に気道の蓋を閉じる力が弱く、食べ物が気道に押しこまれてしまう。
さらに、飲んだあとでのどに引っかかった食べ物が、気道に落ちこむといったことも起こる。これが誤嚥をまねくのです。
飲みこみのときの反射が鈍るのもまた、誤嚥の原因になるとお考えください。通常は、のどのセンサーがはたらくと、すぐに飲みこみが始まります。しかし、この反射のスイッチが入りにくくなると、食べ物がのどにきているのに、体が飲みこみの準備を始めないという遅れが生じます。
筋肉の衰えも、反射の衰えも、どちらも加齢が原因になりがちです。
この説明だけを聞くと、「年をとったら誤嚥は防ぎようがない」と勘違いしてしまうかもしれません。お医者さんから、「この年なら、多少の誤嚥も仕方ないですね」と言われた方もいるでしょう。
しかし、あきらめる必要はありません。ほとんどの誤嚥の原因は、じつは「姿勢」にあるからです。姿勢に気をつけるだけで、ほとんどの誤嚥は防げるのです。
誤嚥防止のために注意すべきは一にも二にも姿勢
すでに説明したように、私たちが物を飲みこむとき、のどは複雑な動作を瞬時におこなっています。繊細な動作ゆえに、体の状態がわずかに乱れるだけで、大きな影響を受けてしまいます。とくに「姿勢」は、飲みこみの安全性に大きく関わっています。姿勢が悪いと、
⃝のどの筋肉が本来の動きができない
⃝気管の蓋が閉じにくくなる
⃝舌が後ろへ動きにくくなる
⃝呼吸と飲みこみのタイミングが乱れる
⃝重力の向きが変わり、食べ物が「落ちる方向」が変化する
といった、繊細な動きのどこかに微妙なズレが生じるため、誤嚥しやすくなるのです。
次ページが続きます:
【姿勢の悪さが誤嚥を起こす典型例】
