姿勢の悪さが誤嚥を起こす典型例が、「猫背」です。
物を飲みこむとき、喉仏は前へいき、上へと持ち上がります。これは気管の入り口を閉じるために必要な動きです。それと同時にあごは自然に軽く引かれます。
飲みこむという動作は、喉仏があごに近づくことによっておこなわれます。この2つの距離が縮まる動きによって、正常な嚥下になります。
ところが猫背の姿勢になると、背中が丸まり、頭が前へ出て、あごが上がりやすくなります。すると、飲みこみに必要な「喉仏があごに近づく」状態とは正反対の、喉仏とあごが離れる姿勢になってしまうのです。
誤嚥が増えている理由は「猫背になっている高齢者」
喉仏とあごの距離が離れると、喉仏を持ち上げる舌骨上筋が引き伸ばされた状態になります。筋肉が伸びきった状態では力を出しにくくなるので、飲みこみの要である喉仏を持ち上げる力が弱くなります。
そうなると、気管の入り口を閉じる動きが不完全になりやすく、食道の入り口も開きにくくなり、食べ物がのどの手前にたまってしまいます。つまり、誤嚥が起こってしまうということです。
もうひとつ、猫背になると胸が圧迫され、呼吸が浅くなります。
深呼吸をするときは胸を張りますよね。これは猫背では呼吸が浅くなることを、体が経験として知っているからです。
飲みこみは、息を止める→食べ物を飲みこむ→息を吐くという流れで動いていますが、呼吸が乱れると、このサイクルにも乱れが生じます。そのため猫背で食事をすると、飲みこむ瞬間に息を吸い、息を止めるタイミングが遅れてしまうため、誤嚥の大きな原因になるのです。
年をとったから誤嚥が起こるというよりは、猫背になっている高齢者が多いから誤嚥が起こるケースが多い――私はこのように考えています。

