出店加速の背景には、業界環境の変化がある。
日本フードサービス協会によると、ファミリーレストランの売上高は、コロナ禍の21年に19年比で29.7%減と大幅に落ち込んだ。22年も19年比83.8%にとどまり、23年にようやく98.9%まで回復。そして24年には前年比109.5%と、全外食業態の中でトップの伸び率を記録した。
コロナ禍で店舗数・売上ともに落ち込んだファミリーレストラン業界は、売上ベースでは明確な回復・好調局面に入っている。
ピソラが郊外ロードサイドで体現する「日常の中の非日常」、リゾート気分で本格イタリアンを楽しむ体験は、この追い風と一致する。
顧客心理を掴むピソラの戦略
ピソラの強みは食だけではない。創業者がリゾートホテルのダイニングで体験した「水のせせらぎや色鮮やかな植物、さわやかなBGMに気の利いたサービスが溢れる癒しの空間」を日本の郊外に再現するというコンセプトが、空間設計の隅々まで貫かれている。
外装・内装に流れる水のせせらぎ、席ごとに仕切りが施されていたり、高さを変えることで目線が合わない設計のボックス席、ガラス越しに差し込む自然光。いずれもコンセプトの具現化だ。
集客力も数字に表れている。土曜日の午前11時にLINEで予約を試みたところ、昼の時間帯はすでに満席で15時30分以降しか空きがなかった。
取材時15時30分の店内は半分以上の席が埋まっており、年齢層は高め。2〜4人連れが中心で、小学生以下の子供連れ、ご高齢のグループが複数のメニューをシェアする姿もある。
食べ放題コースだけでなく、パフェとプレミアムドリンクバーだけでティータイムを過ごすテーブルもあり、食事のピークタイム以外も、席が埋まっている様子から食事以外の使われ方が定着しているのを感じる。
前編でも軽く触れたが、食べ放題のシステムにも工夫がある。一般的な「自分で取って食べる」ビュッフェ形式ではなく、店員に持ってきてもらう形式で、なおかつ1品あたりのボリュームが大きいのだ。自分で量を選べないため、結果として、多くの種類を頼めなくなる。
そう聞くとネガティブに受け止められそうだが、メニューのクオリティの高さがそれを防ぐ。むしろ、「美味しかったし、また来よう」「次はこれとこれを食べよう」という気持ちにさせられるのだ。
次ページが続きます:
【悪い出発点ではないが、課題もある】
