作る側にとっては手間の割に利が薄く、食べる側にとっては割高で日常使いしにくい。供給と需要の双方で、きしめんは選ばれにくい構造に置かれているのだ。観光客にとっては名物であっても、地元では日常的に食べる機会は決して多くない。
「儲かっている」と思われたが、5年後は分からなかった
地元に根付いていながらも広がらない。そうした状況に強い問題意識を持っていたのが、星が丘製麺所を運営するKITTの代表取締役社長、衣笠太門さんである。
「味覚の変化などで地元の人々が食べなくなったとき、その地域の食文化は途絶えると思うのですが、きしめんは今でも十分おいしい。きしめん文化を日常に取り戻すには、東京や大阪のいたる所にある立ち食いそばやうどんのように展開しなければならないと思っていました」(衣笠さん)
そんな思いから、イートインだけでなくテイクアウトや物販も取り入れた新たな業態として、2021年に星が丘製麺所を立ち上げた。チェーン展開を見据え、冷凍麺の活用を前提にした設計だった。しかし現実は厳しかった。人気は確実にあったが、事業の拡大にはつながらなかったのである。
背景にあったのは収益構造の問題だった。大型商業施設への出店に伴う家賃や初期投資、外注による製麺コストが重くのしかかり、売り上げは伸びても利益が残りにくい。結果として、ブランドとしての評価と事業としての持続性が乖離する状況に陥っていた。
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【うどん大手社長が抱いた「もったいない」という感覚】
