このマンションの一部屋を投資目的で購入していた村野博基氏はこう語る。
「議論には10年単位で時間がかかりました。修繕積立金が足りていない割に必要な工事が行えていませんでした。反対派は『それでも住み続ける』と言っていましたが、建て替えのほうに傾いたのは、給水管の交換ができなくなることがわかったから。『水が出なくなって、トイレもお風呂も使えなくなりますけど、住めますか?』という話題から徐々に話が進み始めました」(村野氏)
建て替えても、自動的に入居できるわけではない
建て替え反対派の中には「自分は今80代と高齢なので、建て替えは自分が死んでからにしてほしい」という声もあったそう。そもそも建て替えの議論が進まないのは「全50戸の同意を取って退去するなんて無理なのでは?」という考えの人が多かったからだという。
「建て替えを検討する前に、数回、管理組合向けの勉強会を行いました。行政機関に相談してアドバイザーさんを派遣してもらい、耐震化診断の調査結果から『建物をどうすればいいか?』を検討しました。
建て替え派と反対派の意見は分かれるので、第三者の視点で今後建物がどうなっていくのかをわかっておいたほうがいい。未来が見通しやすくなれば、議論も進みやすくなります」(村野氏)
結果的に10年弱議論を行い、25年末に全住民が立ち退きを完了。先日から解体工事が始まった。新しい建物は、地上14階建て、総戸数52戸の賃貸マンションとして29年に竣工予定だ。
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【各ステークホルダーが三方よしになる綺麗なスキームではある】
