当然だが、住民それぞれに物件を買った背景は違う。「終の住処にしよう」と思って買った人もいれば、商売をやるために購入した人もいる。
「『なぜこのマンションに住み始めたか』『このマンションに住み続けるためには今の法律に照らし合わせると何を検討すればいいか』を議論しながら、『できること』『できないこと』をしっかり検証することが必要です。土地の歴史や周辺地域の事情も含めて、『この場所、この物件をどうしていきたいか?』をまとめるナラティブが必要なんです」(御手洗氏)
前述の通り、耐震性不足や外壁剥落のおそれがなどがある場合は、建て替えのための協議のハードルが少し下がることになった。しかし、御手洗氏は「出席者の4分の3で決議を進めることができるので、むしろ、混乱する可能性もあるのでは」と指摘した。
建て替えが決まった「都内マンション」
こうした困難な議論を乗り越えて、建て替えにこぎつけた某マンションがあるという。
御手洗氏も建て替えに携わったというこのマンションは、東京23区内の大手私鉄路線の急行停車駅から徒歩5分圏内にある。地上7階建ての総戸数50戸の分譲マンションとして1978年に竣工した物件だ。
耐震診断で耐震性が不足していることが判明したが、補強設計を行うと各部屋の専有部内に補強材が入るため住民の同意を得られない……という袋小路に陥っていた。
そこで、「マンション敷地売却制度」を活用。住民が一度権利を売却して立ち退き、それをとある不動産会社が購入して建物を取得するという流れになった。
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【議論には10年単位で時間がかかった】
