まず1つに、マンションの立地が「幹線道路沿いにあること」だという。建て替えを検討するのに必要な、マンションの耐震化診断や補強設計にかかるコストを捻出するためだ。
「国や都道府県は、主要な幹線道路を、災害時の避難、救助、物資の供給のための緊急輸送道路に指定しています。地震が起きたときに、旧耐震基準のビルが道路に向かって崩れたら緊急車両が通れなくなってしまいます。そのような事態を避けるために、道路沿いのマンションには耐震化診断や補強設計などに助成を出しています」(御手洗氏)
耐震化診断を受ければ、建物の強度や安全性が判明し、住民たちで「今後どうする」という議論が進むことになる。
旧耐震基準の建物で、大きな地震での耐久性も低いことが判明したとき、耐震化工事のために行うのが「補強設計」だ。補強設計は一級建築士に依頼をするので、一般的なマンションの場合には数千万円の費用がかかる。
「補強設計では、バルコニーやピロティへの鉄骨ブースの増設、鉄筋コンクリートの耐震壁やバットレス(控え壁)、免震ダンパーを設置するなどの図面が出ます。間取りや部屋の位置次第によっては、部屋面積が小さくなったり構造物ができたりする部屋もできます。それらを考慮したうえで、住民間で『補強設計工事を行うか』を議論するわけです」(御手洗氏)
ハードルが高すぎる「建て替え決議」
とはいえ、幹線道路沿いにあれば検討費用の助成金が期待できる。
「補強設計の案でも、安全性に課題があり、そもそも修繕積立金が足りず補強設計の費用捻出が難しいとなったときに、はじめて『建て替え』という案が出てくることが多いです。そのとき駅徒歩5分以内で立地条件がよかったり、周辺土地の地主さんと仲がよくて開発の交渉の余地があったりすると、建て替えに向けて進みやすい印象がありますね」(御手洗氏)
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【すぐに建て替えができるわけではない】
