実際、町中華のような鍋振りの音や香りは、食欲をダイレクトに刺激する演出としてもとても魅力的だ。
こうして完成した一杯を引っ提げて臨んだ東京競馬場でのイベントは、大きな成功を収める。平日でも1日1000杯、週末には2000杯を売り上げ、手応えは十分だった。特に印象的だったのは、「自分が作ったラーメンで人が喜ぶ」という実感だった。それまではレビューする側だった彼にとって、この体験は決定的だった。
転機はその直後に訪れる。「このラーメン、お店でもやれるんじゃないか?」という小林店主の声に背中を押され、出店計画が一気に動き出す。驚くべきはそのスピードだ。2月に話がまとまり、3月には店舗オープン。本人も「よく分かっていない」と語るほどの急展開だった。
場所に選ばれたのは水道橋。東京のど真ん中、東京ドームの近くという立地もあり、イベント帰りの集客も見込めるエリアだ。ラーメン好きだけでなく、ライト層にもリーチできる環境が整っている。
店名に込められた「遊び心と戦略」
店名「北ノ醤油チーホー」には、彼なりの遊び心と戦略が込められている。「北ノ醤油」というワードで北海道を想起させ、味の方向性を自然と伝える。
一方で「チーホー」は麻雀用語からの引用で、北海道の名店「天鳳」をオマージュした記憶に残る響きだ。「情報」としてのラーメンも重要だと語る彼らしいネーミングと言える。
実際の一杯は、見た目こそシンプルながら、細部には明確な意図がある。豚骨と香味野菜をベースにしたスープに、チャーシューの煮汁とフレッシュな醤油を合わせた醤油タレで具材を香ばしく炒め、一口目からパンチのある味を実現。シンプルを突き詰めながら、誰が食べてもノーリーズンで美味いと感じられる一杯だ。



















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