高市政権「責任ある積極財政」の主眼はどこに/インフレが生んだ積極財政は「金利上昇・円安加速」招く

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コロナ禍後に進んだインフレで名目GDPが拡大し、政府債務残高GDP比が低下。税収もインフレで増えた。法人税収はバブル期以来の水準に回復している。政府資産である外貨準備は円安で含み益が膨らんだ。一方、利払い費は抑えられていた。政府発行の国債の多くは固定金利。足元の金利が上昇しても、これまでに発行した低金利国債の利払いは増えない。

対照的に、インフレで家計は悲鳴を上げ、「積極財政」を打ち出さなければならない状況にある。

高市政権は発足直後、物価高対策を最優先課題とし、電気・ガス料金の補助などに補正予算を投入した。続く2026年度の当初予算では、診療報酬と介護報酬をインフレ連動で引き上げた。いずれも家計を支援する。しかし実際には、防衛費増などの政策要因を除いた「ベース歳出」はインフレ未反映分が5年間で5.3兆円と算出され、26年度当初予算も実質的には歳出抑制になっている、と第一生命経済研究所主席エコノミストの星野卓也氏は試算する。今後、インフレを反映した予算を組めば、さらなる歳出拡大は必至だ。世界情勢の変化も防衛費や産業政策強化への支出を要請する。

「責任ある」状況は時限的

こうした環境は、「責任ある」状況が時限的なものだと示唆する。

1342兆円に上る日本の債務は、家計や企業の金融資産によって支えられている。だが、インフレでその構図も変化しつつある。

日本銀行は異次元金融緩和政策で大量に国債を買い入れてきた。しかし24年3月の同政策解除後、徐々に利上げし国債買い入れを減らしている。誰が国債を買い支えるのか。かつての主な買い手であった銀行は「金利ある時代」に突入し、金利リスク規制などから国債保有を増やしにくい。

そうした環境下、高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ金利上昇を招いた。

局面が変わったのは衆院選後。金利はいったん落ち着いた。自民党が圧勝し、市場は消費減税の実現可能性は下がったとみたようだ。「選挙での野党対策の争点潰しであって、実施は先送りするのではないか」(市場関係者)。

財源確保のハードルは確かに高い。食料品の消費税をゼロにすれば年間5兆円の税収減。財源候補の1つは政府の基金だ。使う見込みのない基金から財源を持ってくることは不可能ではない。しかし5兆円規模となると、半導体をはじめ成長投資の戦略分野に関わる基金にまで手をつけざるをえない。もう1つの財源候補である租税特別措置は、廃止すれば、主な対象である中小企業が反発する。

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