日本の鉄道と違う、欧州「低床車」独自進化の背景 「低いホームで乗り降りしやすく」長年の課題解決

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少なくとも1990年代へ入る前までは、バリアフリーに対する世間の流れが現在ほど厳格ではなく、乗客はこの段差を苦労しながら乗り降りしていた。だが1990年代以降、ヨーロッパでは一般の鉄道においても低床車両が徐々に増えていった。

これは前述のE721系のような「少し車体を低くした」程度のものではなく、低床ホームに合わせて床面の高さを60cm程度まで下げた、まさにノンステップ車両である。

時代を先取りしたイタリア「PR型」

早い時期にこの流れを先取りし、一般鉄道の低床車のはしりとなったのが、2025年限りで引退したイタリアの近郊型低床客車(Piano Ribassato/通称PR型)だ。1965年から84年にかけて1000両以上が生産され、イタリア国内の近郊輸送を支えた。

イタリア 低床客車PR型
E646型電気機関車が牽引するイタリアの低床客車PR型(撮影:橋爪智之)
【写真】車体の中央部だけが低い、ちょっと不思議な外観のイタリアのPR型。低床車両が一般化する前の1960年代に登場した客車だ

PR型の特徴は、台車間の車体中央部が完全な低床構造となっている点で、線路面から60cmという低い床面を実現した。イタリアは、低床ホームが線路面から25cm、高床ホームが55cmと規定されており、PR型は低床ホームなら階段の段差1段分、高床ホームならほぼ段差なく乗り降りが可能となった。

Piano Ribassato 制御客車
冷房改造および更新によって新車並みとなったPR型。2025年までに全車が引退した(撮影:橋爪智之)

台車は一般的な台車を使っているため、台車の上にあたる車体の両端部は車内に3段の段差がある。当時の技術では台車部分まで床を低くするのは難しかったという理由もあるが、トラムのように運賃支払いなどのために車内を行き来する必要がないため、台車部分も含めた100%低床構造にする必要はなく、車体設計はシンプルで複雑な構造ではなかった。

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