日本に必要なのは国論の二分ではない、思考停止・議論停止をやめて「真実を求め、いい案を出すために議論する姿勢」だ

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このような素晴らしい力を持った組織でありながら、その一方で、ちょっとした変更、改善がまるでできないままでいる。その理由は何か。それは、第1に、前述のとおり、既得権益者の弱者連合の互助会にはっきりものを言えないこと。これが主要因であるが、これに加えて、第2に、事なかれ主義。第3に、馬券売り上げ至上主義。この2つが相まって、何も変えられない状態が続いているのである。

第2の事なかれ主義は、ここまで成功してしまったから、改革する必要性に直面しているわけでなく、何か議論を巻き起こすようなことはすべて避けよう、というものである。

典型的には、通信機器の使用問題や、その根底にある調整ルーム問題だ。これらは、八百長のリスクを徹底的に減らすということだが、それは騎手だけの問題でもないし、どんなにやっても抜け道はあるし、現代社会において、金曜から日曜日まで外部から完全に隔離するというのも現実的でない。

何より問題なのは、八百長のリスクは、JRA競馬においてはいまやほとんどない、ということで、万が一あったらという議論にびくついているだけなのだ。八百長が判明したら競馬関係の業務から永久追放するなど、徹底的に厳しい措置をとればいいだけのことなのだが、その度胸がない、ということだ。そのほか、事なかれ主義は、あらゆるところに顔を出す。この改革は非常に難しい。どんな日本の組織にも共通する難しい問題だ。

一方、第3の馬券売上至上主義は、すぐに改められるはずだ。もちろん、日本競馬の発展のすべての源泉はJRAの馬券売り上げだが、1997年の約4兆円から減っているというが、現状は底打ちをして伸びているし、そもそも4兆円という売り上げが異常だったのであって、コストカットできるところは多数ある。だから、これはトップの掛け声で変わりうる。

過度な既得権益は自由化、オープン化せよ

しかし、最大の問題は、既得権益であり、JRAの方針として「徹底的に入口を狭くして、入った人々は全員守る、という「50年前の考え方」だ。そのときは、この主な理由は、八百長防止のために、既得権益をおいしいものにして、八百長のインセンティブをなくすということだった。

いまや時代は変わった。「騎手が八百長をしないようにそれなりに騎手がみんな稼げるように」、という制度だったが、結局、海外騎手の短期免許、生産牧場の圧倒的な支配力により、騎手の世界は、JRAの騎手と海外短期免許の騎手の世界の中では、ほぼ完全実力主義になっている(しかし、このほか、地方競馬の騎手などに関しては、まだ閉鎖的である)。

その一方で、調教師は過度に守られている。調教師制度、厩舎制度、厩務員制度、ここの自由化、オープン化が最大の肝であり、もっとも困難なところだと思われる。この点の詳細はまた次回以降に。

(※ 次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は3月28日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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