長期にわたり防衛への投資を怠ってきた欧州が、いよいよ支出の増額に動き始めている。
欧州防衛機関(EDA)によると、防衛関連での欧州連合(EU)の研究開発支出は2024年時点で総額130億ユーロ(152億ドル)と国内総生産(GDP)比でおよそ0.07%しかなかったのに対し、アメリカのそれは1490億ドルとGDP比で約0.5%だった。
この格差を埋めるには、公的な研究開発支出を増やすだけでなく、資本を動かす従来とは根本的に異なるアプローチが必要になる。
もっとも、防衛力強化の最大の制約は資金ではない。資金を技術的な能力に変えることこそが、真の課題だ。
「現代の防衛」は先端技術で決まる
現代の防衛は兵隊の数以上に、半導体やAI(人工知能)、量子コンピューティング、再生可能エネルギーといった先端技術を支配できるかどうかの戦いになっている。
現代の軍事力は、こうした技術をどれだけ素早く開発し、大規模に展開できるかに左右される。先を行く国々は防衛力の強化と経済の繁栄という2つのメリットを同時に手にできる一方で、競争に劣後した国々は外国に頼ることを一段と余儀なくされる。
地政学的な分断で対外依存のコストが膨れ上がっているタイミングで、依存を深めることになるのだ。
戦略的に重要な技術をめぐる競争が激化する中で、問題の切迫度は増している。アメリカは懐の深い資本市場に大規模な公的支援を組み合わせて技術開発を後押しし、中国は国家資源を振り向けて開発の速度を上げている。対する欧州は、卓越した研究力を有していながら、それを産業に転化するのに苦しんでおり、後れを取りかねない。
つまり、欧州の問題は人材の欠如ではない。世界クラスの大学や高度人材は事足りている。それにもかかわらず、世界で戦える大企業に育つ革新的な会社があまりにも少ないことが問題なのだ。
そうした会社の多くは、外国の会社に買収されるか、外国で事業を拡大する流れとなっている。
防衛は金融・イノベーション政策と切り離せない
要するに、欧州の弱点は金融や制度的なところにあるわけだ。欧州には貯蓄が積み上がっているが、リスク資本の供給は十分でない。これはもはや、経済だけの問題ではなく、軍事問題なのである。軍事力は、新興技術を大規模展開できる能力によって、ますます決定づけられるようになっている。
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