軽く尻もちをついただけなのに…65歳を過ぎると女性に急増する「いつの間にか骨折」の深刻な怖さ
質問する相手の世代を変えても、おそらく答えは変わらないでしょう。そういうイメージが完全に定着しているからです。実際に、男性よりも女性のほうが脊柱後弯を発症しやすいことがわかっています。「背中の老い」の悩みを抱えて私の病院を受診する患者さんも、女性のほうが多いです。
ここでみなさんにクイズです。
Q:女性は男性に比べ、何倍の確率で脊柱後弯(先天性や若年性のものを除く)を発症しやすいでしょうか?
①1.2倍 ②1.5倍 ③2倍
驚かないでください。答えは③。なんと、2倍の確率で、女性のほうが脊柱後弯を起こしやすいのです。まさに「断然」「圧倒的」と表現してもいいかもしれません。
このような状況をまねいているのには、明確な理由があります。背骨の変形は20代から少しずつ始まり、年々進んでいくのですが、女性に限っては50〜60代でその傾向が顕著になるのです。その背景には、閉経に起因する椎体骨折(通称:圧迫骨折)が存在します。
女性が閉経を迎えると卵巣の機能が低下し、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が著しく減少します。エストロゲンの働きはさまざまありますが、そのひとつに「骨密度の維持」があり、エストロゲンの減少にともなって骨がどんどん弱くなってしまうのです。
これが、椎体骨折の発症率を大幅に上げる要因になります。
65歳以降の女性に急増する「いつの間にか骨折」
骨折と聞くと、ほとんどの人は「硬い地面の上で転倒したとき」「スポーツで激しい接触プレーがあったとき」「交通事故で自動車とぶつかったとき」など、体に強い衝撃を受けた際に発生するものという認識をお持ちでしょう。
しかし、高齢になってからの椎体骨折は違います。硬いものに激しくぶつからなくても起こります。日常生活の最中、たとえば物を持ち上げる際や軽い尻もちをついた際に発生するケースが大変多いです。
骨粗しょう症が引き金となって圧迫骨折に至った際は、痛みを生じないケースが非常に多いのです。知らず知らずのうちに、気づいたら骨折していた――それが椎体骨折なのです。だから整形外科医はこれを、「いつの間にか骨折」と呼んでいます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら