端的にまとめれば、現在のさくら水産は、無難な海鮮居酒屋といった所感に落ち着く。ランチと同様、1番の優位性であるリーズナブルさが薄れたことで、“らしさ”が失われている印象だ。筆者が抱いた所感を率直にぶつけると、野田代表取締役はこう語る。
「さくら水産は10年ほど前から、客単価を上げるため高品質な戦略にシフトしていくが、過去の“安かろう悪かろう”のイメージが強烈で、消費者には企業努力が浸透しづらかった。
グランドメニューも年々マイナーチェンジしているが、それより顧客の記憶に残るのは、50円の魚肉ソーセージや200円台の刺身、そして500円ランチと、安さを売りにしていたメニューでした。特にメインの客層である年配の男性客は、過去の“安い”という固定概念が強い。旧態依然のままでは先細りしていくのは目に見えていた」
過去の成功体験も、時代にそぐわなくなれば足枷になる。往年のブランドイメージも相まって、ある意味さくら水産は八方塞がりな状況にあると言える。
生き残りをかけた“新業態”
そこで運営元のテラケンが目下、注力しているのが、新業態『魚がイチバン』の出店だ。
元々はさくら水産だった3店舗を改装し、2023年から業態転換を進める中、新業態の業績は好調に推移している。コロナ以前の2019年比で見れば、「九段靖国通り店」が約150%、「横浜日本大通り店」が約130%、「西新宿駅前店」が約110%だという。
後編『さくら水産社長「もう出店の予定ない」の真意』では、堅調な新業態の分析とともに、テラケンの今後の戦略に迫る。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら