「塞翁が馬」だからこそ人生は楽しい…山中伸弥さんが近大の卒業式で語った"二転三転"の研究者人生

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近畿大学の卒業式でのスピーチをお届けします(写真提供:Gakken)
iPS細胞の作製技術を確立した功績により、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんですが、じつはその研究者人生はけっして順風満帆なものではなかったそうです。
そんな山中さんが、平成27年度(2016年)の近畿大学の卒業式で、自らの経験をもとに学生たちに贈ったスピーチとはどんな内容のものだったのでしょうか。山中さんの共著『近大スピーチ: 15分で人生が変わる心に刺さる言葉』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

大好きな中国のことわざ『人間万事塞翁が馬』

近畿大学卒業生の皆さん、本日はご卒業、誠におめでとうございます。また、ご両親、ご家族の皆さん、本当におめでとうございます。

実は私の娘も、つい最近、大学を卒業しました。ですから、今日お集まりのご両親と同じような気持ちでおります。本当に長年の子育て、お疲れさまでございました。

今日は、皆さんに私の大好きな中国のことわざをお伝えしたいと思います。それは、『人間万事塞翁が馬』、略して『塞翁が馬』。

こういうことわざです。

『塞翁が馬』の"塞"というのは"お城"です。"翁"というのは、"おきな、おじいさん"ですね。中国のお城の近くの村に、おじいさんがいたらしいです。そのおじいさんの唯一の財産は、一頭の馬。そして、ひとり息子さんと住んでおられたそうです。

ところがある日、その唯一の財産の馬が逃げてしまいました。すぐ村人たちが集まってきて、おじいさんを「大変ですね」と慰めました。でも、おじいさんは冷静に「いやいや、これは何かいいことの始まりかもしれない」と言いました。

すると、2、3日してその馬が帰ってきて、しかも、その馬よりもさらにいい名馬を一緒に連れてきました。

村人はまたすぐ集まってきて、「いや、おじいさん素晴らしい。よかったですね」と言いました。でも、おじいさんは「いやいや、これは何か悪いことの始まりかもしれない」と答えました。

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