「塞翁が馬」だからこそ人生は楽しい…山中伸弥さんが近大の卒業式で語った"二転三転"の研究者人生

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僕にとっては、これを踏ん切りに研究者を辞めて、臨床医に戻ろうと思っていた、その土地がなくなってしまって、そのときは本当に母親のことを恨みましたし、また夢枕に出てきた父親にも、「なんちゅうことすんねん」と思って恨みました。

でもそのことが、結局は研究を辞めずに踏みとどまることにつながって、その6年後くらいにiPS細胞という技術に出合うことができました。そして2012年にはノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

2012年からの3年間で2回の謝罪会見も

もちろんノーベル賞をもらったときは嬉しかったですが、これも『塞翁が馬』です。一見、いいことですよね。こういう賞をもらうというのは。しかし、その賞をもらったことによって、大変なこともいろいろありました。

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(受賞した)この2012年から3年間の間で、私はあんまりやりたくもない謝罪会見というのを2回もやってるんです。ノーベル賞でいろいろ注目を浴びるようになった結果です。

ですから、ノーベル賞をもらったことも、やっぱり『塞翁が馬』。でも、ノーベル賞をもらって、もちろんいいこともたくさんあります。今日、この近畿大学の卒業式に呼んでいただいたのも、ノーベル賞のおかげだと思っています。

皆さん、近畿大学には、これだけたくさんの卒業生、OB・OGの方がいて、これはすごい力です。

これから社会に出られて、いろんなことがあると思います。皆さんそれぞれに『塞翁が馬』があると思います。だから人生は楽しい、とも言えると思います。でもそのときに、いいことばかりではなくて、一見大変なこともきっと起こると思います。

そのときはぜひ、この『塞翁が馬』ということわざを思い出していただいて、村人のように一喜一憂するのではなく、おじいさんのように、どしっと構えていただきたい。

とくに、一見よくないことが起こった、そのときこそ、「これはチャンスかもしれない」、そんなふうに考えてもらいたいと思います。また、たくさんの卒業生、同窓生、このつながりというのも、ものすごい力になります。

これからの長い長い人生、今まで皆さんが送られてきたよりも、はるかに長い人生が、皆さんの目の前に待っています。これからのご活躍を心よりお祈りしております。

山中 伸弥 京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授、医学博士

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やまなか しんや / Shinya Yamanaka

1962年生まれ。大阪府出身。1987年、神戸大学医学部卒業。臨床研修医として勤務ののち、大阪市立大学大学院医学研究科を修了。その後、米国グラッドストーン研究所で3年間の研究を行い、帰国。大阪市立大学、奈良先端科学技術大学院大学などを経て、2010年、京都大学iPS細胞研究所所長・教授に就任。2020年より京都大学iPS細胞研究財団理事長兼務。2012年には、iPS細胞の開発が評価され、ノーベル生理学・医学賞を受賞。iPS細胞の医療応用を実現するためにさまざまな研究を推進している。

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