私を含む高年齢層は、思春期に『3年B組金八先生』(特に第1・第2シリーズ)や山田太一脚本による『岸辺のアルバム』『ふぞろいの林檎たち』を食い入るように見つめた世代である。
ちなみに、これらはすべてTBS作品。つまりは「ドラマのTBS」のすご味を知っている世代でもある。TBSの『報道特集』や『サンデーモーニング』を見て、トランプ大統領の動きや裏金問題を嘆き、大谷翔平に喝采しながら、『御上先生』を見つめている同世代が一定数いるような気がしてならない。
ただし、令和のテレビドラマ界において、「社会派需要」を獲得するためには、ちょっとした技がいるとも思うのだ。
まず「単に一方的に正義感を振りかざす古臭い作品」と思われないような、現代的話題性を喚起する見え方づくり(「辞令 日本教育の破壊を俺に命ずる」というコピーはそのあたりを意識したものと思しい)。さらには息もつかせないパンパンの情報量を持ったストーリー作りも。
それらの撒き餌をしっかり散らした上で、コア価値としての「社会的正義」を堂々と表現するべきなのだ。『虎に翼』だけでなく、フジテレビ『エルピス-希望、あるいは災い-』(2022年)やテレビ東京『SHUT UP』(2023年)、WOWOW『フェンス』『東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-』(ともに2023年)などは、そのあたりをしっかりと意識した良作だと思っている。
『金八先生』になれるのか?
実は『御上先生』と『3年B組金八先生』は無関係ではない。
第2話で副担任である吉岡里帆の部屋に『金八先生』のDVDがずらっと並んでいるさまが映し出され、その後で主人公・松坂桃李(御上先生)が「とある有名な学園ドラマの新シリーズが始まるたびに、日本中の学校が荒れて学級崩壊を起こす」「生徒のために奔走するスーパー熱血教師以外は教師にあらず、という空気を作ってしまった」と吉岡里帆に語りかけるのだ。
御上先生による金八先生批判――もちろん壮大な反語である。
そんな屈折した技を披露しながら、『御上先生』は『金八先生』を受け継いでいる。逆にいえば、それぐらいの技を使わないと、この令和の世で『金八先生』を受け継ぐことなどできないのだ。
いよいよ最終回。御上先生は金八先生になれるのか? 卒業生たちに贈る言葉は?
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