「絶滅危惧種」のウナギ、成長ホルモンや抗生剤などの薬を使わない「無薬養鰻」に取り組む大分県の中小企業

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養殖鰻とは天然の稚魚(シラスウナギ)を採取し、育成したもの。大きく分けて「アンギラロストラータ(アメリカウナギ)」と「アンギラジャポニカ(ニホンウナギ)」があり、前者は北米や中南米、後者は台湾、中国、日本で稚魚が採取される。

そしていずれも野生生物としては「絶滅危惧種」に指定されており、稚魚の採取量も減少してきているのだ。

また鰻はその生態が特異である点でも、尊重に値する魚だ。どんな生涯を送っているかは近年まで謎に包まれていた。

シラスウナギ
鰻の稚魚であるシラスウナギ。現在流通している養殖鰻はすべて、天然のシラスウナギを採取し育てたものだ(写真:山田水産)

例えば日本で採れるニホンウナギはフィリピンのマリアナ海溝で生まれ、長い旅をして日本にやってくる。幼生の間は海流に乗るため柳の葉のような形をしており、近海に至ると、細長いシラスウナギと呼ばれる状態になる。成長すると川などで過ごし、また産卵の旅に出ていくのだ。産卵場所に至る経路はまだ解明されていない。

命を次世代につなぐために、大変な体験をしているのである。

なお、市場に出ているうち、スーパーなどで安く販売されているのは多くはアメリカウナギ。さらに養殖や加工の場所により、中国産、日本産などがある。スーパーなどで販売されている蒲焼等鰻の加工品については原料原産地(国産or輸入)を表示する義務が食品表示法によって定められている。

産学官連携による「完全養殖」の技術開発

成魚やシラスウナギの採取量は県や地域ごとに定められており、すぐに絶滅してしまうわけではないが、将来にわたり鰻を楽しむためには対策が必要となっている。

そこで、日本では産学官連携により、卵の状態から育てる「人工孵化」と、人工孵化によって育った鰻同士をかけ合わせ、卵から稚魚まで育てる「完全養殖」の技術開発が進められてきた。

実用化に向けてはさまざまな課題があるが、中でも難しいのが、卵からかえった「仔魚」からシラスウナギに育てる過程だ。ほとんどが途中で死んでしまい、原因も解明できなかったのだ。

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