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ライフ #脱うつのトリセツ

「ただ泣くしか…」うつ病になった精神科医の葛藤 がんばるほど無力感だけが大きくなっていった

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  • 三浦 暁彦 日本精神神経学会専門医 一般社団法人三陽会理事長 おおかみこころのクリニック代表理事
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最も印象に残ったのは、次の言葉です。「すべての物事は、その人の心によって成り立つ」。

この世のすべては、もともと決まっていることではなく、自分の心や考え方が決めるものだということです。

がんじがらめの鎖がほどけた

例えば、あなたの目の前に1つの大きなドンブリがあったとします。スープを入れれば食器になりますし、剣山を置いて花をさせば花器になります。ひっくり返して上にタオルを敷けば、枕として使えるかもしれません。すべての物事に決まりはなく、見方次第で変幻自在だと知ったのです。

凝り固まった考えでがんじがらめになっていたことに、私は気づかされました。

「こうあるべき」

「そうすべき」

「ああいうものだ」

これらはすべて、ただの思い込みでしかない。固定観念の鎖に気がつくと、自然と自分の偏見を手放す勇気がわいてきました。手放してしまえば、なんのことはありません。幻想の鎖が消え去り、心が解放されていったのです。

自分の考えに縛られなくてもいい、もっと自由に生きていいと気づいた数日後、私は、自ら病院に連絡を取り、復職したいと伝えました。

スマホのSNSを復活させ、心配をかけていた周囲の人たちに連絡をして、感謝と自分の状況を正直に伝えました。誰かに伝えることで、自分を客観視することができ、回復のスピードも速くなったように思います。休職から8カ月後に病院に復職することができました。

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医師を辞めようと考えていたはずの私が病院への復職を決めたのは、医師として患者さんと向き合うことが、「今後の人生をどうやって生きていこう」という問いに対する答えだと、ようやく気づいたからです。

「一切の生きとし生けるものは、幸せであれ」とブッダは言います。生きているものは、みんな幸せになる権利があるということです。ブッダは、さらに言います。

「今日、まさになすべきことを熱心になせ」

私は、自分にできることはなにかと自問自答しました。メンタルクリニックの精神科医であり、しかも「うつ病」を経験した自分だからこそ、心に不安を抱える人のケアをすることができる……。

患者さんの気持ちがわかり、患者さんに寄り添うことができ、実体験を踏まえた解決法を提示することができる……。

それらができるのは、自分がうつ病になったおかげだと思っています。

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