自民の新たな火種「戦後80年談話」に渦巻く"疑念" 保守派の抵抗は必至、それでも石破首相は邁進
そこで改めて、首相談話とは何かを明確にする必要がある。内閣総務官室によると、正式名称は「内閣総理大臣談話」で、同室担当者は「政府としての基本的態度・方針について、閣議決定を経て、首相が発表する」と説明する。ただ、談話の受け手は「決まっておらず、個別のケースによって変わる」と付け加える。
これに関しては『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)によると、安倍氏は談話を出すに当たり、「まず村山談話の誤りを正す」ことを意識したと答えている。さらに「村山談話の間違いは、善悪の基準に立って、日本が犯罪を犯したという前提で謝罪をしていること。当時の世界はどうだったのか、という視点がすっぽり抜けている」と指摘したとされる。
こうした経緯について、過去の談話決定に関与してきた元外務省幹部らは「社会党の村山(富市)さんは自分の信念のもと、戦争責任を終わらせるには、首相のおわびが適切だと考えた」と説明。その一方で、安倍談話の後段にある「私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぐ」という部分を取り上げ「党内右派からは『余計だ』と言われ、内容に賛同するはずの左派も『安倍さんに高評価は与えられない』と批判したが、そもそも談話については、好悪の感情を抜きにして公正に評価するべきだった」と指摘する。
「明確な意図込めた」村山・安倍両氏、そこで石破氏は…
こうした“解説”も踏まえれば、村山、安倍両氏はそれぞれ、戦後談話に明確な意図を込めていたことは否定しようがない。だからこそ有識者の間では、政府が検討を進めているとされる「戦後80年談話」について、「石破首相に“込めたい思い”がなければ、節目だからと言って談話を出す必要はない」「具体的な行動が伴わなければ談話を出す意味がない」などの懸念や疑問が相次ぐ。
もちろん、関係者には「石破談話」への期待もある。「朝鮮半島や台湾をめぐり、日本が矢面に立つ東アジアの安全保障リスクは増している。この局面で戦争への反省と不戦の姿勢をアピールする談話を出したほうがいい」「『抑止力』という言葉がもてはやされ、それが破綻して戦争となったときの悲惨さが軽視されている現状からも、改めて『不戦の誓い』を示す意味は大きい」などの立場からだ。
こうした賛否両論が交錯する状況だからこそ、石破首相の判断が注目されるわけだが、「今回の談話検討で、石破首相は複雑な多元連立方程式を解く難しさに直面している。状況次第では政権の命運も左右しかねないだけに、まさに『宰相としての資質と器量』が問われる」(政治ジャーナリスト)ことは間違いなさそうだ。
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