長崎にある"ほぼ最古"のRC造｢廃団地｣再生の物語 ｢50年先にも残したい｣ 県出身の若者が悩みつつ奮闘

長崎市役所のすぐ近くに建つ旧魚の町団地は1949年竣工。当初は酒屋町団地という名称で、住居表示の変更に伴い「魚の町団地」となった（写真：筆者撮影）

長崎市役所のすぐ近くに戦後復興の最初期に建てられた日本最古級のRC造（鉄筋コンクリート造）の公営住宅、旧魚の町団地（以下魚の町団地）がある。

県営住宅として使われてきたが2018年に最後の入居者が退去、2019年まで使用されていたものの、以降空き家に。2020年から見学会を開始するなどして将来を模索。2024年に行われた公募型プロポーザルで民間事業者による活用が決定、再生が始まっている。

1948年設計の「48型」は5棟が現存

最初に魚の町団地がどれほど希少かをざっと説明したい。

日本最古のRC住宅は1916年に端島（軍艦島）に建てられた30号棟で、当初は4階建て、その後増築されて7階建てとなっており、当時としては非常に大きな建物だった。

ご存じの通り、端島は炭鉱閉山以来島全体が放置されており、建物は劣化。そのうちでも築年数の古い30号棟は現存はしているものの現状、いつ倒壊してもおかしくない状況とされる。

戦前のRC造住宅では関東大震災からの復興支援として1924年～1933年にかけて東京、横浜に建てられた同潤会アパートが有名なところだが、そのすべてが2010年代までに建て替えられ、現存していない。同潤会青山アパートメント（現表参道ヒルズ）、同潤会代官山アパートメント（現代官山アドレス）などをかすかに記憶している人もいるかもしれない。

戦後初のRC住宅は東京都心の高輪に建てられた東京都営高輪アパートで1947年8月に計画決定、1948年5月に4階建て2棟、48戸が竣工している。戦後復興期の公営住宅は設計が標準化され、設計年度を称した型式で呼ばれている。例えば、高輪アパートは最古の「47型」。1990年に建て替えられ、現在は東京都住宅供給公社の高輪一丁目アパートとなっている。