松屋「うっかり千円超え」を続出させる巧みな戦略 シュクメルリの大ヒットから、値付けの妙を考える
吉野家の「牛すき鍋膳」(877円)や「鰻重 一枚盛」(1207円)、すき家の「いくら丼 並盛」(980円)などがそうだ。

牛すきやうなぎ、いくらは専門店に行けばもっと高い値段で提供されることの多い食べ物。「内的参照価格」よりも安い!と思われそうだが、シュクメルリとの違いは、日本人の多くはそれらの味をよく知っているということだ。
よく知った味があまりに安いと品質に懐疑的になり「吉野家で中途半端なうなぎを食べるくらいなら、もう少し出してもいいからちゃんとした店で食べたい……」と考えなくもない。
松屋のシュクメルリは誰も知らない料理だったがゆえに、高い値段にも「そういうものか」と疑いを持たれずに済んだ。
シュクメルリ以外の松屋の高額商品には、12月現在提供している商品だと、「カットヒレステーキ丼」(1180円)、「煮込みビーフシチュー定食」(1190円)などがある(すき家同様に「いくら丼」もあるが)。

ヒレステーキやビーフシチューは、牛すきやうなぎ、いくらほどの高級品のイメージはなく家庭料理の範疇。そこまで品質に懐疑を持たれず違和感なく注文されそうだ。
デフレの値下げ合戦から「イチ抜け」したのも松屋
そもそも、松屋の価格戦略は他社から抜きん出ている。
インフレの今から考えると遠い昔のような話だが、『買い物の科学』によれば、平成のデフレ時代は牛丼チェーンの熾烈な低価格競争が起きていた。

競合に勝つため各社は牛丼の値段をどんどん下げていき、ついにすき家がキャンペーンで牛丼1杯を250円にまで下げた。

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