ふかわりょうさん「スマホを置いて散歩しよう」 一人は孤独じゃないし、孤独は不幸でもない
──ここ数年、『ひとりで生きると決めたんだ』『世の中と足並みがそろわない』というエッセイを上梓し、2024年3月には小説『いい人、辞めました』を出されました。
僕がタイトルのようなメッセージを能動的に発信しているかのように思われがちなのですが、実際は、そのために書いているわけではありません。
──精力的に執筆をされているのは?
書きたいからです。しっくりこないことが日々、積み重なっているので。ただ、SNSの投稿文のように、共感を求めているわけではありません。自分と同じ感覚の人に出会いたいというわけでもない。
SNSは便利なツールなので悪者にはしたくないのですが、光があることで影も落としています。
世の中と対峙できなくなった
──影とは?
世の中と、ダイレクトに対峙することが難しくなりました。
ランチやお茶をするお店を探している時、以前はお店の雰囲気やのれんの感じ、店構えをその場で見て、良さそうだと感じたら入っていました。ところが今はSNS上の写真や口コミ、評価、点数に基づいて店を選ぶようになった。知らず知らずのうちに、人の評価、人のレンズを介して世の中と向き合ってしまっている。
僕は毎年アイスランドに行っていました。ブレートの境目や巨大な滝、岩肌むきだしの山々を見ていると、自分が地球に生きていることを実感します。ただ、カメラを持って行くと、ダメなんです。人に見せるわけでもないのに、とめどなく撮ってしまう。しかも毎回、同じ場所で、同じものを撮っていることに気がつきました。
そこで、カメラを持たずに行くことにしました。例年よりも強く、目にしている世界と対峙できた気がします。
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