「家族3人を殺害された」父が訴える警察への不信 熊谷連続殺人事件から9年…「遺族を見捨てないで」

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アルバム 加藤裕希さん
記者に見せるために、妻と2人の娘が写った写真が収められているアルバムを開く加藤裕希さん(写真:弁護士ドットコムニュース)

事件を起こしたのは、ペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン受刑者(当時30歳)。さいたま地裁の裁判員裁判は2018年に死刑の判決を下したが、2審の東京地裁が2019年に無期懲役とし、そのまま確定した。

「司法を恨むというか、もう悔しくて一生頭から離れることがありません」

1審の死刑判決を覆された刑事裁判だけでなく、加藤さんは民事裁判でも打ちのめされることになる。

ジョナタン受刑者は加藤さん家族を殺害する3日前の2015年9月13日、任意の事情聴取を受けていた熊谷警察署から逃げ出していた。

翌9月14日に熊谷市内に住む夫婦2人を殺害し、さらに2日後の9月16日に84歳の女性を殺害した後、加藤さん宅に侵入し、妻と娘2人の命を奪ったのだった。

ジョナタン受刑者が警察署から逃げ出した後、近くで住居侵入の通報が寄せられるなどしており、埼玉県警は9月14日に夫婦が殺害された事件の参考人としてジョナタン受刑者を全国に手配していた。一方で、加藤さん家族が巻き込まれるまで、ジョナタン受刑者が逃走していたことを広報しなかった。

加藤さんは葬儀を終えた後になって初めてその事実を知った。驚きに加えて、怒りの感情が湧き上がった。

位牌
左から次女・春花さん、妻・美和子さん、長女・美咲さんの遺影。3人の位牌にはそれぞれ同じ日付が刻まれている(写真:弁護士ドットコムニュース)

「埼玉県警は注意喚起をなぜしなかったのか」

<警察は地域住民に対し、もっと効率的な注意喚起をなぜ行ってくれなかったのか。せめて「こういう人物が逃げている可能性がある」とお伝えしていただければ、私の家族も対応のしようがあったと思います>

そうした疑念を拭えず、埼玉県警の対応に問題がなかったかを問うために国家賠償請求訴訟を起こした。

疑問を抱いたのは加藤さんだけではなかった。事件現場周辺の住民らを中心に広がった署名活動では約4万筆が集まり、事件の検証を求める要望書が埼玉県知事に提出された。

しかし、残されたわずかな期待も裏切られている。

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