障害者雇用「代行ビジネス」と批判、農園就労の今 本人が納得して選び、やりがいを得ているのか

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まず驚かされたのは、オフィスの快適さだ。真新しい壁やフローリングにはシミ1つない。観葉植物を所々に置いた広い休憩室の見晴らしはよく、おしゃれな喫茶店のような内装。作業場所は屋内で空調も効くため、体調に不安のある人でも働きやすいだろう。

障害者たちは笑顔を交えながらも、真剣な表情で植物を世話していた。ここで生産したハーブ類はティーバッグなどに加工し、顧客企業が自社のノベルティなどに活用。ある石油会社のブースには、バジルを使ったパスタの写真が、「ごちそうさまです」とのメッセージと共に貼ってあった。

土埃の舞う農場に隔離された障害者が、黙々と単純作業をこなす――。記者が抱いていた、そんな事前のイメージはいい意味で裏切られた。施設を運営するスタートライン社(東京都三鷹市)の西村賢治社長はこう語る。

「顧客の雇用率を達成させる目的で障害者を集め、ケアの不十分な農園があるのは残念ながら事実。ただ、そうした業者は今後、淘汰されるのではないか。障害者を雇いたい企業は多い。よりよい環境を求めて施設を移る人も増えており、『ここで働きたい』と思われなければ生き残れない」

障害者雇用支援でパイオニア的な存在

スタートライン社は2009年に設立し、「障害者雇用支援」という市場を切り開いてきたパイオニア的な存在だ。創業時から手がけるサテライトオフィスに加え、2017年に農園も始めた。現在はこの2事業で計30を超える拠点を構え、約1800人の障害者が就労する。

念願の株式公開を目前としていた2023年1月、前述のエスプール・ショックが起こり、風評の悪化から上場を取りやめた。「元々、賛否両論ある事業なのは自覚していた。ただ、それにしても非難があまりにも大きかった」(西村社長)。

農園を選ぶ障害者の多くは、社会人経験がないか少なかったり、心身の調子が安定していなかったりする。

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