10年積み上げた電通「グロース型」コンサルとは 独自のアプローチで、「人が動く」変革を実現
企業が直面する「変革の2周目の課題」
――現在、企業はどのような課題に直面しているのでしょうか。
古平 経営者の方々からは、「パーパスを策定したけれども、従業員になかなか浸透しない」「新規事業の種はつくったがまったく伸びず、既存事業とのシナジーが薄い」「DXで業務効率化はできたけれども、稼ぐ力につながっていない」といったご相談をよくいただきます。
変革の取り組みは一通り実施してきたものの、思ったような収益につながらない、本質的な成長につながっていないといったお悩みを、私たちは変革「2周目」の課題と呼んでいます。
山原 とくに最近よく伺うのが、「社内の変革疲れ」です。ここ数年、多くの企業が「パーパス策定」や人的資本経営推進アクション、新規事業開発プロジェクトなど、「1周目」で社内を巻き込むアクションを実施されてきました。
このアクション自体はどれも一定の成果を出されていることが多いのですが、だんだん社内に既視感が生まれてきてしまっているケースも少なくありません。
ある企業の経営企画の幹部の方が「社内で説明会を開くたびに、下を向いて入ってくる社員が増えてきている」とおっしゃっていました。企業にとってよい取り組みをしているはずなのに、社内の熱量が高まっていないのです。
古平 この現象は、数字にも表れています。電通では、2021年12月と23年11月の2回にわたって「企業の変革に関する従業員意識調査」を実施していますが、第2回調査の「変革推進層」は第1回調査よりも半減し、11.7%となってしまいました。「変革他人事層」は逆に7ポイント以上増え28.3%と3割近くを占めています。
従業員の共感を生み出しながら、変革を前に動かしていく
――変革を実現するうえで、従業員の熱量が下がってきてしまうのは確かに課題ですね。どうすれば解決するのでしょうか。
山原 次の成長に向けて、人と組織の意識と行動、企業文化を進化させたいとおっしゃる経営者は最近とくに多くいらっしゃいます。ただ、これは何か1つボタンを押せば変わるものでは当然ありません。1つの方針と戦略の下で、アクションとコミュニケーションを重ねていくしかありません。
とくに、上記の調査で、「変革に前向きになれない」理由で多いのが「経営陣が変革の道筋を示していない」というものです。ところが、実際経営陣の方々に聞くと、「かつてないぐらい従業員とのコミュニケーションに力を入れている」と答える方は多いんです。つまり、伝えてはいるけれど、浸透や共感に至っていないケースが多いということです。
新たな戦略や変革の方針には、不安や不満が必ず出てきます。そしてそれは経営陣が思うより多くの方々に生じます。従業員の現在のインサイトをしっかりと理解したうえで、なるべくシンプルにそぎ落とされた力強い戦略・方針や、ゴールまでの道筋を伝え続けることが大事になります。
古平 何のために変わろうとしているのか、変わることでどんな新しい未来が開けるのかを従業員に理解してもらい、自分事化してもらうことが大切なので、「課題の解像度」も上げていく必要があります。自社の抱えている課題と、従業員一人ひとりが持つ仕事に対する考え方や思い、いわゆる従業員インサイトをしっかり捉えなくてはなりません。
私たちはまず、経営陣との1on1や現場の方々とのセッションを通じて、企業の本質的な課題についての「問い」を立てるところからプロジェクトを始めます。
企業内部の変革と、事業サイドの変革を、統合的に推進
――そのような企業の課題に、どうアプローチされているのでしょうか?
山原 私たちは、「本当の意味で変革する、変わる」ためには、外と内の両方で「統合的に」変革を推進する必要があると考えています。新規事業の提供など、対顧客の価値創造が「外の変革」、エンゲージメントを高めて従業員満足度を向上させるなど、対従業員の価値創造が「内の変革」です。
多くの企業では、「外の変革」に注力する一方で、この「内の変革」、つまり従業員の意識・熱量を上げ、社内を巻き込んでいくということを推進できていないケースがよく見られます。
古平 事業変革も、企業内部の変革も、お悩みの入り口は違えど、いずれも課題が複合的・複層的であり、解決するには全体視点での(ホリスティックな)アプローチが必要だということです。
電通グループでは、事業変革と企業変革をリンクさせながら、全体視点で変革を実現していく独自のアプローチを「Holistic Transformation Model」と呼んでいます。
とくにクライアントニーズが多い、企業文化・人事変革、営業変革、ブランド変革
――中でもとくに企業からの具体的な相談としては、どの領域が多いのでしょうか。
古平 ここ1、2年は「組織人事変革」、その拡張としての「企業文化変革」、また事業変革の領域ではとくに「営業部門の変革」と「ブランド変革」などについてのご相談をよくいただきます。
例えば、営業部門の課題としては、「生産性を上げようと営業支援システムを入れたが、従業員にまったく使われていない」「営業の仕事が受け身になりがちで、先読みができていない」「営業パーソンのモチベーションが高められておらず、離職率が高い」などがよく聞かれます。
これらに対し、一つひとつを対症療法で治療してもよくなるものではありません。
私たちは、営業部門の抱える課題の解像度を上げ、いわゆるDXだけではなく、組織内での風土や人財要件なども変革していきます。営業活動で得られるものを全社活動に活用していく、ナレッジシェアの基盤づくりなども行うことで、営業部門の本質的な「価値」が高まり、企業全体の変革につながった事例もあります。
山原 営業変革の領域に加え、「Holistic Transformation Model」の考え方をベースに、とくにご相談の多い「企業文化」「営業」「人事」「ブランディング」などの重点領域については、支援プログラムをまとめています。
・営業部門の変革を支援する「Sales Transformation For Growth」プログラム
・人事領域の変革を支援する「HR For Growth」プログラム
・新たな企業像に向けてブランドの変革を支援する「Branding For Growth」プログラム
これらのプログラムは相互に関連していて、企業文化変革とブランド変革はとても密に連関していることが多いため、企業の課題に合わせて、テーラーメイドでプログラムを組み合わせながら、変革を支援しています。
「人が動く」を実現する力と、成長まで実行し続ける力
――変革支援における、電通グループならではの強みがどこにあるのか教えてください。
山原 電通グループはマーケティングをなりわいとしてきました。人を見つめ、インサイトを発見し、人が動きマーケットが動くことと向き合ってきました。これはBXの領域でも同じです。社内を動かす企業変革も、市場を生み出していく事業開発も、最後は「人」が動かないと実現しません。
そのために、プロジェクトを始めるときには、経営幹部との対話や、若手社員・ミドルマネジメントを集めたセッションを通じて、その企業の変えるべき課題、変えてはいけないDNAをしっかり見つめ、その企業ならではの変革のプログラムを組成します。
古平 変革は、従業員一人ひとりが「変わったらいいことがありそう」と納得して前向きに取り組まないと実現できません。そのため、施策に落とし込む際には、シンプルで伝わりやすく、従業員の皆さんが自分事化できる道筋をつくることに留意しています。広告やマーケティングで培ってきたクリエイティビティを生かせるのも、電通グループならではの強みです。
山原 こうした企業変革や事業変革のご支援は、コンサル会社では、その「業種」や「領域」に特化したコンサルタントが手がけるのが一般的かもしれません。しかし私たちは、各領域・産業のプロフェッショナルはいますが、あえて過度な機能分化はせず、10年前から、さまざまな業種、さまざまなテーマの課題に向き合い、ノウハウを蓄積してきました。
その結果、例えばグローバル食品企業の企業文化変革に対して、自動車企業で取り組んだケースが生かせるといったようなこともあり、ほかにはない価値や知見を提供することができています。
古平 そうやって業界横断、サービス横断で課題に向き合えるのが電通グループのユニークネスですし、広告・マーケティングで培ってきた「実現までやり切る実行力」も強みです。
新しいサービスを開発したとしても、マーケットに参入しシェアを獲得するに至ることや、新たな事業でマーケットを創出することは簡単ではない道のりです。けれども電通グループは当然マーケティング機能も有していますので、そこを最後まで支援することができる。
戦略だけを提供して「絵に描いた餅」で終わらせることなく、変革にコミットして最後まで伴走する、今までのコンサル会社とは異なる新しいパートナーとして、企業の成長にこれからも貢献していきます。